医者に「がん」と宣告され、「なぜ自分が」と目の前が真っ暗になる──そんなイメージが伴うのは、がんが「死」に直結する病だからだろう。
生涯でがんにかかる人の割合は、日本人全体で53.9%。さらに男性に限れば61.6%と、実に6割以上に及んでいる(がん研究振興財団『がんの統計2017年版』)。いまや“なって当たり前”の病だ。これほど身近な病気であるにもかかわらず、「痛い」「苦しい」「怖い」といった印象はいまだ根強い。
しかし、実は「がんで死ぬのは怖くない」という医療関係者は多い。その理由のひとつは、患者が想像しているほど「痛い病気ではない」ということだ。『痛くない死に方』などの著書がある、長尾クリニック院長の長尾和宏医師が語る。
「がんの痛みは年齢によって異なり、年をとればとるほど穏やかになります。主に末期の患者に投与する、痛みを和らげるためのモルヒネについては、若い人なら100%必要ですが、高齢者になると半分程度に減るのです」
がんの部位によっても痛みは異なる。特に痛みが少ないといわれるのが「肝がん・腎臓がん」だ。
肝臓や腎臓は他の臓器に比べて痛覚があまりなく、発見後から短期間で亡くなるケースがみられるため、転移や合併症がなければ痛みも少ないといわれる。後述するが、がん治療は末期でも緩和ケアで痛みをコントロールしやすいため、のたうち回るような最期を迎えるケースは少ない。
◆とにかく痛く苦しい病気は何か?