ライフ

【嵐山光三郎氏書評】戦争体験を語る半藤一利氏の警告

『語り継ぐこの国のかたち』/半藤一利・著

【書評】『語り継ぐこの国のかたち』/半藤一利・著/大和書房/1500円+税
【評者】嵐山光三郎(作家)

 いまの日本はこれまで保持してきた「この国のかたち」がひっくりかえり、社会秩序は崩壊し、価値体系がご破算となり、経済は混乱をつづけ、社会的にアナーキー状態になっている。バブル破綻という時流の勢いで精神的にも破壊されて「近代日本の第三の転換期」と半藤先生は喝破する。

 昭和五年生まれの歴史探偵は、この難局をいかに乗り越えるか、という対症療法的な解決法ではなく、長期的観点からの処方箋を示します。「もう老骨なればこそ」と、その大いなる使命を読者に託そうとする。

 第一部「この国に戦争が遺したもの」では「わたくしの八月十五日」として、「戦争で死ぬということ」が体験として語られる。軍部の暴走をゆるした統帥権という化け物。老骨先生が語るヒトコトヒトコトが、身にしみていきます。若い人に読んで貰えるように読みやすさを考慮して、文献の旧漢字を新字にし、漢字をかなに改め、句読点やルビを付けた。

 第二部「この国の未来に伝えたいこと」では「言論の自由をいかに守るか」。言論の自由はある日突然に奪われるものではなく、権力によって外堀から内堀へとじりじりと埋められ、いつのまにか言論は動きがとれなくなる。

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン