一般的ながん治療は、「外科手術」、抗がん剤などを使った「化学療法」、そして「放射線療法」の三本柱を、がんの部位や進行具合によって組み合わせて行なわれる。かつては患者の年齢や体力に応じて、選択する治療法に制限が出ることもあったが、そうした状況は変化している。
抗がん剤などの化学療法の専門医で、日本医科大学教授の勝俣範之医師(腫瘍内科)が語る。
「抗がん剤を使った化学療法は、食事が摂れないほどの強い吐き気を催すものもありました。しかし、制吐剤などの進歩でそうした吐き気もなくなり、入院でなく通院で治療できるようになりました。抗がん剤は副作用が酷いという情報がいまだに報じられますが、それは20年くらい前の話で、現在の化学療法はとても進歩しています。
もちろん外科手術も進んでいます。内視鏡の技術が進み、腹腔鏡手術や胸腔鏡手術などに加え、『ダヴィンチ』というロボット手術もあります。これらは侵襲(治療の過程で身体を傷つけること)が少なく、患者の体力的な負担が少ないうえに入院期間も短くなっています」
東京放射線クリニック院長の柏原賢一医師は、放射線科専門医の立場からこう語る。
「放射線治療も以前に比べて高精度な技術が登場しました。がんの腫瘍の形に合わせて“狙い撃ち”できるようになり、腫瘍周辺の正常な組織を傷つけるなどのデメリットが減ってきている。大腸がんであれば治療後の下痢や出血などの症状が出にくくなりましたし、肺がんの場合も治療後の肺炎が少なく、軽くなりました」
やみくもに「がんは苦しい」と恐れず、適切な処置を受けることによって「苦しくも痛くもない」ということを知れば、がんとの向き合い方も変わってくる。