間もなくやってくるクリスマスや誕生日などの祝い事に欠かせないケーキ。だが近年、意外なことに街中の洋菓子店が次々と廃業に追い込まれているという。一体なぜなのか。神戸国際大学経済学部教授の中村智彦氏がレポートする。
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個人の洋菓子店が急激にその数を減らしています。例えば、神戸市は洋菓子の街として観光プロモーションを行うほど、その名が知られています。しかし、ここ数年、有名洋菓子店の廃業や倒産が続いているのです。
2014年には西洋菓子処フーケが突然倒産し、大きな話題となりました。その後も、閉店や廃業、倒産が続き、2017年には神戸や大阪、東京に販売店やカフェなど9店舗を展開していたイグレック・プリュスが資金繰りの悪化を理由に廃業。さらに、本高砂屋(神戸市東灘区)が展開してきた高級洋菓子ブランド「御影高杉」の全3店舗を閉店するなど、いずれも知名度が高かっただけに地元神戸では大きな話題になりました。
そして、今年も10月に洋菓子店「モンブランKOBE」が負債3億円で破産申請を行いました。このように一見華やかなように見える洋菓子の世界ですが、実は競争がし烈化しているのです。
神戸で洋菓子が成長したのは、欧米の玄関口の港町として外国人が多く居住し、様々な料理や菓子類が早くから定着したからです。こうした料理やお菓子作りは、多くの中小の個人商店が担ってきました。そして、かつては、神戸市は世帯当たりの洋菓子消費量が全国で上位に来ていました。ところが、この十年で急激に順位を落としているのです。
こうした原因は様々考えられます。
一つは、神戸市民の高齢化と子育て世帯の減少です。ケーキ類を喜ぶ、子供のいる世帯が急激に減ってきているのです。さらに、個人洋菓子店の需要を奪っているライバルの一つが、コンビニエンスストアです。近年、コンビニ各社はスイーツ分野に力を入れていることが、消費者の購入する場を変えているのです。