胃がんなどの術後、治療後に伴う食事制限によってやせ衰えていく印象を漠然と抱きがちな闘病だが、実際には「旨いメシ」を楽しむことは十分に可能である。
2006年7月に胃がんで胃の全摘出手術を受けた王貞治氏は、術後1年足らずで、周囲も驚く健啖ぶりを見せていたという。
「大好物のラーメンやパスタ、天ぷらにステーキまで基本的には何でも口にできるようになっていました。もともと“食べることが大好き”という方ですが、ビールも飲み、デザートもいける。すごい回復力でした」(球界関係者)
がん患者の食生活といえば、抗がん剤の副作用による食欲不振や嘔吐に加え、胃がんや食道がんなど、治療した部位によってはほとんど固形物を食べられないケースもある。
だが、がん治療と食事の問題に詳しい上尾中央総合病院の大村健二医師(外科医)はこう語る。
「本来、『がんになったら食べてはいけないもの』などありません。闘病中は栄養不足になりがちで、筋肉量も減少していくので、むしろ魚や肉など、高タンパクのものを食べたほうが良いのです。よく『栄養を摂るとがん細胞も成長してしまう』と言われますが、まったくの迷信です。免疫力を保つためにも、良好な栄養状態を保つことが重要です。
お酒やコーヒー、香辛料も適量ならまったく問題ありません。味付けを薄くして食欲が湧かなくなるくらいなら、気にせず濃い味付けにしてしまってかまわないと指導しています」