来年10月の消費税率10%への引き上げとともに議論の的になっている「軽減税率」。同じ食品でも持ち帰れば8%のまま据え置きだが、その場で食べれば10%と税率が異なるため、“一物二価”の不公平さが反発を招いている。軽減税率の影響をもっとも受けそうな外食業界、中でも「居酒屋の衰退がますます進む恐れがある」と指摘するのは、フードアナリストの重盛高雄氏だ。
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政府は景気を下支えするという名目により、税率の引き上げと同時に軽減税率の導入を決めた。先に発表された概要によると、外食産業全体に大きな影響を与えることは間違いない。なぜなら同じ店舗で購入しても持ち帰りの場合は軽減税率が適用され8%のままだが、通常の店内飲食やフードコート、そしてコンビニのイートインスペースを利用すれば10%の新税率が対象になるからだ。
要は「食べる場所」によって税率が異なるため、消費者にとっても店舗にとっても複雑でわかりにくい。この仕組みでは店内飲食を前提とした外食産業は税率アップによる影響をもろに受けることになるだろう。特に打撃の多い産業は居酒屋業態ではなかろうか。
もっとも居酒屋の衰退は、ここ数年の出来事ではない。日本フードサービス協会の外食産業データ売上金額(対前年比)によると、景気後退が鮮明となった2008年に100.0%を付けて以来ずっと前年割れを記録している。利用客数の前年比で見ても、2008年からずっと前年割れの状態だ。
そこに来年からの消費増税が追い討ちをかける。居酒屋業態はリーマンショックによる不景気や震災の影響などもあり、ただでさえ法人需要や宴会需要を減らしているうえに、度重なる増税によって個人の常連客まで失ったら、どうなるか。たとえ老舗チェーンであっても豊富なメニューと品質を保てなくなり、瀕死の状態に陥ることも考えられる。
結局、政府がいくら景気は回復基調だ、と叫んだところで消費者の懐は潤ってはいない。昨今「ちょい飲み」や「中食」という飲食スタイルが定着し、生活防衛に努めながらささやかな楽しみを見つけているのが庶民の現状だ。