年末にかけてテレビでは多くのスペシャルドラマが放送されるが、話題作の1つが『犬神家の一族』だ。多くの名優が演じてきた金田一耕助を今作ではNEWSの加藤シゲアキが務める。これまでの『犬神家の一族』を振り返ると、あの時代劇との共通点も見えてきた。時代劇研究家でコラムニストのペリー荻野さんが独自の視点で分析する。
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クリスマスイブに放送されるフジテレビの『犬神家の一族』。その予告編を見て感じたのは、『犬神家』はもはや日本の伝統芸能の域に達したということである。
物語は、那須で財閥と呼ばれるほどの資産を一代で築き上げた犬神佐兵衛の遺産相続をめぐって、奇怪な連続殺人が起こり、名探偵・金田一耕助がその謎に挑むというもの。原作はミステリーの大家・横溝正史。金田一を演じるのは、加藤シゲアキである。
「犬神家」が、「伝統芸能」になった理由の第一は、映画、ドラマ、舞台と繰り返し制作されていること。私はこの11月に新派公演の舞台で「犬神家」を観てきたばかりである。映画では、1976年に公開された市川崑監督の映画『犬神家の一族』がよく知られている。大規模な宣伝、書籍販売とメディアミックス戦略で大きな話題を呼んで映画は大ヒット。ここで金田一を演じた石坂浩二は、次々と横溝作品に主演し、2006年には久々に市川崑監督と「犬神家」のリメイクでも主演して話題になった。
ドラマではやはり70年代に古谷一行主演の『横溝正史シリーズ』が登場し、その第1弾『犬神家』は、視聴率40%を超えている。その後も、中井貴一、片岡鶴太郎、稲垣吾郎などが金田一を演じた『犬神家』ドラマが放送された。つまり、多くの人はいろんなカタチで「犬神家」を観たことがあるのである。ストーリーもキャラクターも犯人だって知ってるけど、それでも見たい!作りたい! こんな吸引力は、歌舞伎や落語、作品でいえば『忠臣蔵』のような伝統的な名作と同じだ。
『犬神家』と『忠臣蔵』との共通点は、もっとある。オールスター作品にできることだ。『忠臣蔵』では、悲劇の殿様(イケメン)浅野内匠頭を若手スターが演じ、仇討の中心人物・大石内蔵助を大物スターが演じるのがお約束。そして討ち入り四十七士メンバーにも人気俳優が多数出演して、それぞれのファンを総動員できるメリットがある。
同じく「犬神家」も、金田一だけでなく、怖い顔をした犬神家の三姉妹(松子、竹子、梅子)をはじめ、彼女らの息子たち(白いゴム面を被った佐清や佐武、佐智)、さらには遺産相続のカギを握る絶世の美女、野々宮珠世を誰が演じるか。それだけでも興味深い。ちなみに新作の犬神三姉妹は、黒木瞳、松田美由紀、りょうだ。怖いわ~。この3人ににらまれて、加藤金田一は大丈夫なのか。大丈夫なわけない。