年間約20億円の役員報酬のうち、有価証券報告書(以下、「有報」)で開示するのは約10億円にとどめ、残りの約10億円を退任後に受け取る──。そんな“筋”を書いた東京地検特捜部の取り調べに対し、日産自動車会長だったカルロス・ゴーン容疑者(64)は、容疑を否認。“報酬隠し”を巡る全面対決が続いている。
事件の“舞台”となった有報は、「企業の身上書」といえる。この報告書をもとに投資家は企業の経営状況を把握し、経営者の手腕を測る。当然、その内容に偽りや誤魔化しがあれば、厳しく罰せられる。
金融庁は、上場企業に対し、1億円以上の報酬を受け取っている役員の氏名と報酬額の開示を義務づけている。
2017年度(2017年4月期~2018年3月期決算)の有報をもとにまとめると、「1億円超プレーヤー」は704人。トップはソニーの平井一夫・会長(57)で、2位以下にはセブン&アイ・ホールディングスのジョセフ・マイケル・デピント取締役(56)をはじめ、ブリヂストンのエデュアルド・ミナルディ元副社長(64)や武田薬品工業のクリストフ・ウェバー社長(52)など外国人経営者がズラリと並ぶ。
だが、そのランキングが、日本の経営者たちの“懐具合”の実態を正確に表わしているわけではない。東京商工リサーチ情報本部の坂田芳博氏が解説する。
「役員の多くが自社の株を所有しており、有報で開示される役員報酬とは別に、毎年株の配当を受け取っている場合が多い。高額な役員報酬ばかり見ていても、経営者たちの本当の収入は見えてきません。『配当額』を加えると、ランキングの顔ぶれは様変わりするのです」
本誌・週刊ポストは、東京商工リサーチの協力をもとに「役員報酬+株主配当」の額を算出。日本の企業トップの「本当の年収ランキング」を作成した。