公文書改竄事件に事務次官セクハラ辞任。スキャンダル塗れの1年を過ごした財務省にとって、消費税10%引き上げを控える2019年は“省の中の省”としての威光を取り戻す捲土重来の1年となる。しかしそんななか発覚した新たな醜聞は、この組織のモラルハザードの深刻さを露呈した。
年の瀬も迫った12月14日、関東財務局が「エーアイトラスト株式会社」というネット金融業者に1か月間の業務停止命令と業務改善命令を下した。同社が募集し延べ約1300人の出資者から約6億円を集めたファンドについて、〈虚偽の表示をする行為〉があったという。同社は、福島第一原発事故に伴う除染事業の資金を調達しようとネットで呼びかけたが、そこにこんな問題があったと指摘された。
〈スキーム図において、復興庁や環境省等の名称を用いて、あたかも官公庁等が関与して行う除染事業の支援業務を行う目的で、本債券ファンドで集められた資金が貸付けられるかのような表示をしている。しかしながら、該当する官公庁等が関与して行う除染事業は存在せず、(中略)虚偽の表示を行っていたものと認められる〉(関東財務局の発表より)
同社のウェブサイトに掲載されたスキーム図では、〈復興庁→地方自治体→事業統括業者〉と続く矢印の先にこのファンドがあり、復興庁の公共事業に関わる資金集めのように見える。そのほか発表によれば、2020年東京五輪のスポンサー企業と提携して事業を行なうとして約3億円を集めたことに関しても〈虚偽の表示〉があったという。
新聞各紙は処分に先立つ証券取引等監視委員会の勧告(12月7日)に際し、「架空事業で資金募る」(日経新聞)、「除染・五輪と偽り9億円集金」(産経新聞)などと報じたが、いずれも短いベタ記事扱いだった。たしかに、ネット金融業者の虚偽表示などありがちな話ではある。だが、記事では触れられていない重要な事実がある。この会社の役員は代表を除いて全員、元官僚なのだ。