2004年アテネ五輪から2016年リオデジャネイロ五輪まで、五輪を四連覇した女子レスリングの伊調馨が、2020年東京五輪での五連覇へ向けて一歩前へ進んだ。12月23日に行われた天皇杯全日本レスリング選手権で、リオデジャネイロ五輪63kg級金メダリストの川井梨紗子をくだし、女子57kg級で優勝したからだ。リオデジャネイロ五輪から約2年ぶりに復帰して、五輪五連覇という誰も成し遂げたことがない大記録への期待が高まっている。ところが、レスリング協会内部、特に一部の幹部クラスには伊調の復帰を快く思っていない雰囲気がある。
「パワハラは確かにあったし、その点で彼女は被害者でしたけれど、それ以外は……」と協会関係者はぼやく。
「リオ五輪以来の復帰戦となった三島での全日本女子オープン選手権では、なぜかナイキのシューズを履いていた。長年、日本協会はアシックスと専属契約を結んでいて、日本代表はアシックス製品を提供してもらっています。五輪では、特別仕様のシューズと試合着を用意してもらっている。もし日本代表になったとき、普段から履いているシューズにしたいと彼女が主張したら協会幹部が困るのが分かっていて、そういう行動をとる。復帰を応援する純粋な気持ちがあった人の気持ちが冷めても無理はない」
復帰以来、シューズを巡って不穏な気配が漂っていたが、川井との決勝ではアシックスのシューズを履いていた。なぜそのシューズになったのか、という理由は不明だ。
試合や練習での、伊調の金メダリストらしい堂々とした振る舞いを称賛する声は多い。だが、協会内部に波風を立てる行動は、パワハラ騒動が露見する前からあったと別のレスリング関係者も嘆く。
「女子強化トップの栄(和人)さんから露骨な嫌がらせを受け続け、拠点を東京に移してからの伊調さんが、自分の味方だと思える人が少なかったのは気の毒だと思います。でも、ロンドン五輪で金メダルをとったあと、男子選手の決勝戦を前にした昼に、その選手のセコンドにつくコーチと連れだって買い物へ出かけたのはとても褒められたものじゃない。確かに、試合に勝てば大騒ぎはされないし、非常識な振る舞いも許容する体質が協会にはありますが……」