半グレ集団「関東連合」は2012年に発生した六本木クラブ襲撃事件をきっかけに縮小し事実上の消滅状態となり、怒羅権(ドラゴン)など複数の集団が2013年に「準暴力団」に指定された。そして2018年12月、大阪府最大の半グレグループ「アビス」は約半数のメンバーが逮捕、送検されて壊滅状態に追い込まれている。取り締まりが厳しくなるなか、変質した半グレ集団について、ライターの森鷹久氏がレポートする。
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大阪・ミナミの繁華街を拠点に活動する半グレ集団「アビス」のメンバーら男女55人が検挙された事件。アビスは大阪市内を中心に複数のガールズバーなどを経営し、客を脅して法外な飲食料金を請求する「ぼったくり」をしたり、対立する半グレ集団が経営するガールズバーに金属バットなど武器を持って襲撃するなどしていたという。
「半グレ」とは、暴力団に所属はしていないが犯罪などを繰り返す反社会的勢力の事を指す。2000年代中盤から、全国の自治体で暴力団排除条例が施行されると、まさに「暴力団の代わり」といった存在感で、各地の繁華街、裏社会にその勢力を拡大し続けた。だが、半グレ集団の暴力的な面や、目に余る反社会的行為が重ねられるに従って社会問題として捉えられるようになり、彼らが力をつけるたびに警察が取り締まりを強めて叩く、ということが繰り返されてきた。
これまで、警察は何度も半グレ集団に対する壊滅作戦を行ってきた。しかし、ひとつを叩き潰すと、また別の形ですぐに集団がつくられる、といった繰り返しになりつつある。暴力団と警察当局の関係も同様で、長年まるでモグラ叩きのようなやり合いを展開してきたわけだが、それでも半グレは、やはり暴力団とは異なる存在であった。
しかし、今回の大阪の事件を受けて、かつて関西最大の半グレ組織「強者(つわもの)」に所属していた経験のある元メンバーの・X氏は、半グレは「暴力団そのものになった」と話す。
「俺たちが(半グレ集団)やってた頃も、組(暴力団)との付き合いがなかったわけではないです。いろんな地域から集まったやんちゃな奴らの集合体って感じで、それぞれに、兄貴分的な組の人間がいたりすることはありましたが…。アビスの連中は完全に“組の人間”じゃないですか? もはや半グレではない、完全にヤクザ」(強者元メンバー・X氏)
X氏によれば、かつて半グレ集団の「シノギ」といえば、違法ドラッグや偽ブランド品の売買であったり、今回逮捕された事案と同様に、脱法的な飲食店経営などであり、一見するとヤクザがこれまでやってきたシノギと、傍から見ればあまり変わりはなかった。しかし「内部事情」は、ヤクザや最近の半グレの事情とはかなり異なっていたという。
「元々ヤクザが嫌だ、という理由で集まったメンバーが多かった。ヤクザなんかやってても規制だらけで、オマワリにもすぐに目を付けられる。だったら、組なんかに入らず自由にやれる方がいいや、って。シノギをやるにあたって、ヤクザもんと付き合うこともありましたが、一時的な礼金の支払いはあっても定期的に支払うバックとか上納金はない。支払えと言われれば、武闘派のメンバーが必ず“話し合い”をした。これは本当に話し合いなんですよ…」(X氏)