一億総中流と日本が言われたのは過去の話。平成の間に、日本における貧富の差は拡大し、新しい富裕層が増えた。経済アナリストの森永卓郎氏が「平成」の記憶として忘れてはいけない一冊に選んだのは、平成の世に爆発的に増えた富裕層について詳細に記述したノンフィクションだった。
●『プライベートバンカー』/清武英利著/講談社+α文庫/900円+税
平成を一言でいうなら、「格差拡大」の30年だと私は考えている。かつて一億総中流社会と言われた日本が、いまや米国に近い格差社会に変貌してしまった。
ただ、格差拡大のメカニズムは、平成の前半と後半で異なっている。前半で起きたことは、正社員がリストラされて、非正規社員に転落するという下方向の格差拡大だった。その総仕上げをやったのが、小泉内閣が断行した規制緩和を中心とする構造改革だった。この点に関しては、私自身の『年収300万円時代を生き抜く経済学』でも詳しく書いたし、報道もなされてきた。
ところが、国民にあまり知られていないのが、平成後半に起きた格差拡大だ。こちらは、富裕層が爆発的に増えるという、上方向の格差拡大だ。