日産自動車前会長・カルロス・ゴーン氏の逮捕で、世界中が「先進国・日本」に疑問を抱き始めている。弁護士で元検事の郷原信郎氏が指摘する。
* * *
昨年12月、東京地検特捜部は、「退任後の役員報酬約50億円を有価証券報告書(有報)に記載しなかった」という虚偽記載の罪でゴーン氏を起訴した。
私はネットメディア等で、この容疑について疑義を唱えてきた。役員退任後にコンサル契約や競業避止契約で支払うことを合意していたとのことで、検察はそれが「確定」していたから、在任中の役員報酬として記載すべきだと主張するが、それは、コンサル・競業避止契約の対価であって、役員報酬ではない。
ゴーン氏には、在任中の役員報酬を決める権限はあっても、退任後の報酬は、その時点の経営者が決めることでゴーン氏には権限はない。また、記載義務があると言うなら、社長の西川氏が作成・提出義務がある有報に自分の判断で記載すれば良かった。刑事事件にして、突然逮捕するような重大な事案だとは到底言えない。
この事件は、検察がゴーン氏を追放したい日産側に騙されたか、退任後の役員報酬というものを勘違いしたか、いずれかではないかと疑っているが、間違いに気づいても検察は暴走を始めると止まらない。ゴーン氏逮捕で国内外に重大な影響を与えた上で不起訴にすれば、検事総長のクビが飛ぶ。「組織の論理」からすれば起訴は想定通りだった。今後、検察は裁判を長期化させ、結果を先延ばしして責任の所在をうやむやにしようとするだろう。