大手総合商社の三菱商事が2019年4月から導入する予定の新人事制度が注目されている。積極的な若手登用を柱にした内容だというが、その背景には意外にも“若者の商社離れ”があるという。一体どういうことなのか。ジャーナリストの河野圭祐氏がレポートする。
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1年近く前の2018年2月、丸紅の國分文也社長は、あるイベントでこう危機感を吐露していたという。
「最近、30歳ぐらいの若手社員の離職率が商社全体で非常に上がっている」
総合商社といえば、いまも昔も就職人気ランクで上位を占める狭き門。高給で知られる代表業種であり、大手商社の業績はどこも好調だ。もちろん、離職率が上がっているといってもそれは過去との比較で、離職率が高いとは言えないだろうが、経営層の危機感は相当あるようだ。
ちなみに國分社長は以前、こうも語っていた。
「あと数年もすれば、ミレニアル世代(20代前半から30代後半ぐらい)が社会のマジョリティを占めるようになる。あらゆるものがデジタルネイティブで、所有欲も高くないこうした層が社会のど真ん中に来たら、いろいろなものがずいぶん変わっていく。若手商社マンも、先輩たちと同じ仕事をルーティンでしていたら突然、崖が現れるかもしれない」
AIやIoT、モビリティーにシェアリングエコノミー、フィンテック、さらにGAFA(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン)に代表されるメガプラットフォーマーの隆盛で、事業環境は大きく変わりつつある。商社はBtoCよりBtoBのビジネスウエートが高い業種だが、Bの世界であろうがCの世界であろうが、旧態依然のビジネス手法のままだと、新たな潮流にたちまち洗い流されてしまうというわけだ。
この点は、商社業界首位に君臨する三菱商事とて同じこと。2018年11月の中間決算説明会で同社の垣内威彦社長も、
「当社の自動車、電力、通信、決済、eコマース、リテール、ヘルスケアといった各事業分野の、何もかもがデジタル革命の流れに絡んでいて、現在はある種の産業革命の真っただ中にある」との認識を示した。