FAで広島から丸佳浩、西武から炭谷銀仁朗、その他にもオリックスを自由契約になった中島宏之、元マリナーズの岩隈久志を獲得するなど、今オフの補強に余念のなかった読売ジャイアンツ。しかし、FAの人的補償として広島に長野久義、西武に内海哲也という生え抜きの主力選手が流出したことで、ファンからは惜しむ声が続出している。
3度目の巨人監督就任となった原辰徳監督は1月8日、客員教授を務める国際武道大学で特別講義を行なった際、「勝負の世界は足し算ばかりではない。引き算で長野、内海はいなくなったが、トータルで答えが出たときにどういう結果になるか。これが勝負」と話した。野球担当記者が話す。
「何かを得れば、何かを失うのがFA制度ではある。たしかに丸は大きな戦力に間違いないですし、ここ数年の成績を比べれば長野より上です。しかし、プロ野球を人気商売と考えた時、長い間、巨人に貢献してきた長野や内海の流出をファンがどう思うか。圧倒的にその視点に欠けているといわざるを得ないでしょう」(以下同)
巨人の“生え抜き軽視”は今に始まったことではない。FA制度が出来ると、1994年に中日から落合博満、1995年にヤクルトから広沢克己が移籍してきた。この時、最も割を食ったのは、他ならぬ生え抜きのスター選手である原辰徳自身だった。
「長嶋茂雄監督就任1年目の1993年、原は4番を任されていたものの、絶不調に陥り、入団以来12年連続で続けていた20本塁打以上の記録も途切れます。すると、長嶋監督はFAで落合を獲得し、4番として起用し続けた。1994年、ケガで出遅れた原ですが、復帰戦で本塁打を放つなど67試合で14本塁打、規定打席不足ながらも打率2割9分とそれなりの成績を残した。しかし、このシーズンで8年ぶりに犠打を記録するなど、長嶋監督から全幅の信頼を置かれていないことも伝わってきました。翌年5月のヤクルト戦では、9回一打同点の場面で、代打を送られるなど原のプライドを傷つけるような起用もありました。結局この年限りで原は現役を引退しています」