中国最高人民検察院は1月7日、公式サイト上で、中国国有造船大手の中国船舶重工グループ(CSIC)の孫波・前社長兼党組副書記(58)を収賄罪と国有企業職員の職権乱用の容疑で正式に逮捕したと発表した。同グループは中国初の空母「遼寧」を建造したことで知られるが、香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」は「孫氏が遼寧の重大な軍事機密を漏洩した疑いがある」などと報じている。
一部台湾メディアは、「孫氏による空母『遼寧』の機密情報漏えいが事実であれば、中国の情報機関である中国国家安全部の兪強声・外事局長が1986年、機密情報を携えて米国に亡命したことに次ぐ大事件」と指摘している。
同グループは1999年に設立された中国国務院(政府)が管轄する超大型国有企業で、中国の10大軍需企業の1つ。中国の国産空母や海軍軍艦などの建造も担当している。
孫氏は大連造船新廠造船技術所副所長、大連造船重工社長、大連船舶重工グループの会長や社長を歴任してきた。大連造船新廠と大連造船重工は、大連船舶重工グループの前身。そして、大連船舶重工グループは、冒頭で登場した中船重工の傘下企業で、孫氏は中国海軍を支える生え抜きの最高位の技術者であり経営者でもあった。
ところが、中国当局は昨年6月、「重大な規律違反と違法行為の疑いがある」として孫氏を拘束し、12月に党籍はく奪処分と公職追放処分を決めた。孫氏は同グループの実質的なナンバー1で、中国の最高機密に属する軍事情報に精通している。それだけに、香港のサウス紙は孫氏の「規律違反と違法行為」のなかには、汚職問題のほかに、中国初の空母「遼寧」に関する軍事機密を外国の情報機関に売り渡した容疑が含まれていると報じた。さらに、同紙は、「孫氏が死刑判決を言い渡される可能性があるが、孫氏の案件が多くの国家機密に関わるため、裁判の詳細は公表されないだろう」とも付け加えている。