“ピンクリボン運動”を筆頭に、受診を促すイベントや施策は数多い。しかし、どこで、何才のときに、どのくらいの頻度で受けるべきか、必要ない検診・検査は何なのか教えてくれる医師や自治体はほとんどない。
受けても無駄な検査を盛り込まれて、お金を搾り取られてしまうケースまである、と話すのは医療ジャーナリストの村上和巳さんだ。
「中には人間ドックを主として、附属のクリニックを設けているところもあります。一概に全部とはいえませんが、お金儲けのために値段の高い医療を施される危険もあり、要注意といえる。たとえ『大きい病院に行きなさい』と他院を紹介されたとしても、患者としては『治るのだろうか』『今後どうなるのか』などと不安が募るものですし、とかく余計なストレスがかかります」
もし自分が受診するなら、地域の基幹総合病院で行っている人間ドックを受けると村上さんは言う。
「臨床経験の豊富な医師の診断を受けた方が、より“感度”のいい判断がなされることが期待できるからです」
また、尿酸値に加え、心電図の検査も現在ではやる意味が変わってきているようだ。国立がん研究センターの検診研究部長で医師の中山富雄さんが解説する。
「尿酸値の検査は無駄ですね。もしそれが高くても、結果として起こるのは痛風くらい。死ぬほど痛いといいますが、死ぬ病気ではないので、起きてから治療しても遅くない。薬をのむなら一生のことになるので、食事制限に限ります。スポーツ選手などであれば別ですが、一般の人にはあまり重要ではないでしょう」
一方、心電図についてはどうなのだろうか。
「心電図は、心臓の筋肉に障害が起きる心筋症の診断には役立ちますが、治療が必要なかたにはだるさや動悸、息切れといった自覚症状がある。不整脈であっても、『あ、脈が飛んだ』と自分自身でわかるもの。現在では心電図の重要性は薄れてきています」(中山さん)
女性の関心が高いコレステロール値も、「単に基準値以内ならば手放しで安心ではありません」と赤坂山王クリニック院長の梅田悦生医師が解説する。
「コレステロール値は、善玉と悪玉の比率が大事なんです。LH比といって、コレステロールの数値自体が正常であっても、悪玉÷善玉が2.0以上だと動脈硬化の疑いがあります。また、LH比が2.5以上ですと心筋梗塞や脳血栓になるリスクが大きくなります。こういったことは結果通知には書かれていないことが多い」