日産自動車のカルロス・ゴーン元会長が逮捕された件が注目を集めている昨今、役員報酬について取り沙汰されることが増えている。高額すぎると問題視されることが多いが、果たしてその議論は妥当なのか。取締役がいっせいに辞任した官民ファンド「産業革新投資機構」の報酬問題をもとに、経営コンサルタントの大前研一氏が考察する。
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昨年暮れ、官民ファンド「産業革新投資機構(JIC)」の田中正明社長(元三菱UFJフィナンシャル・グループ副社長)ら民間出身の取締役9人全員が辞任した。経営陣への高額報酬や国の経営関与のあり方などをめぐって所管官庁の経済産業省との対立が決定的になり、三行半を突きつけた格好である。
とくにクローズアップされたのは高額報酬問題だ。報道によると、昨年9月に発足したJICは当初、経産省から経営陣の報酬総額が業績によって最大で年1億円を超える案を示され、その提案通りに報酬規定の大枠を決めた。ところが、政府内で高額報酬に対する批判が高まり、経産省は提案を白紙撤回して「報酬を3150万円に減額する」「公的資金の運用益から成功報酬は出さない」と通告。この手のひら返しに田中社長が激しく反発し、経産省と財務省出身の常務2人を除く取締役が総退陣する異常事態となったのである。
記者会見で田中社長は「経産省による信頼関係の毀損行為が9人の辞任の根本的な理由だ」とした上で、「私自身は固定部分が1550万円で、短期業績報酬部分が4000万円。ベンチャーキャピタルなどの世界では8000万円、9000万円のレベルだという調査もあり、それなりに抑えたレベルだと思っていた」と説明した。