「何をやったってキムタク」――そう言われることの心境をテレビ番組で吐露したことが話題の木村拓哉。長澤まさみと初共演となる映画『マスカレード・ホテル』では、ホテルに潜入する刑事役を演じる。最新作でどんなキムタクを見せたのか――同作をいち早くチェックしてきたコラムニストのペリー荻野さんが綴る。
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本日公開となる映画『マスカレード・ホテル』は、謎の連続殺人犯が次の現場に指定した超一流ホテルを舞台に、ホテルマンに扮して潜入捜査をするエリート刑事・新田(木村拓哉)と優秀なフロントクラーク山岸(長澤まさみ)が、犯罪の阻止と犯人逮捕に挑むという物語。すべての客を疑う新田とすべての客を信じる山岸の対立、菜々緒、笹野高史、生瀬勝久など次々現れる怪しい客たちの「仮面」がはがれる瞬間、周到な犯人との攻防など、見どころも多重構造になっている。
この映画の印象をひと言で言うなら「大きな船」だ。東野圭吾の累計310万部突破の人気シリーズを原作に、木村、長澤をはじめ、渡部篤郎、小日向文世、石橋凌、梶原善、篠井英介、生瀬勝久、松たか子、鶴見慎吾などなど豪華キャストが集結、一流ホテルのロビーを丸ごと精密に作り上げた巨大でゴージャスなセットで、華麗な騙しあいが続く。
これだけでもずっしり重量級の作品だが、それに加えて出演者の勝地涼が完成披露試写会で「前田敦子さんにストーキングする役でストーキングするうちに結婚しました」とコメントしたり、明石家さんまが自ら志願してエキストラ出演、作者が原作執筆時、木村をイメージして新田を書いた事実など、話題は「満載」。まさにたくさんの人やものを満載して船出する大きな船のように見える。
その船の船首に立ち、批評の風に身をさらす主役の木村は、無精ひげのアウトロー系刑事顔から珍しい七三分けになってホテルマン顔に変化し、「『いらっしゃいませ』では15度、『ごゆっくりお過ごしください』では30度、『申し訳ございません』では90度」といわれるお辞儀をはじめ、制服の上着の前での手の組み方などの所作もマスター。その中で発揮された木村流のポイントは、世の中を斜に見る刑事姿の傾いた姿勢の「斜め木村」とホテルマンとしてピシっと決めた姿勢のいい「直立木村」の使い分けだった。