横浜市に住む主婦の三谷紀子さん(45才・仮名)は昨秋、こんな体験をしたと話す。
「天候不順でスーパーの野菜が品薄になって一斉に値上がりしたので、パックに入ったカット野菜を買ったんです。見た目もきれいだし、なにより安いのでお得だと思って…。でも食べてびっくり。みるみる口の中が腫れぼったくなり、血豆ができました。病院では原因不明と言われましたが、食べるのをやめるとピタリと止まったんです。心当たりは野菜が『中国産』だったこと以外になく、子供に食べさせてしまったことを後悔しています──」
2018年は29もの台風が発生、そのうち5つが上陸するなど日本は災害続きだった。特に、9月末に列島を縦断した台風24号は、強風によって巻き上げられた海水が地上に降り注ぐことで起きる「塩害」まで引き起こし、農作物の生育に大きな影響を与えた。
天候不順の深刻化で、スーパーの野菜の価格は跳ね上がった。そこに“ピンチヒッター”として輸入されてきたのが中国産野菜だ。
東京都中央卸売市場でも中国産の入荷は激増。昨年9月上旬、前年同期に29トンだった中国産にんじんの入荷は一気に81トンにまで増えた。中国産玉ねぎも前年同期比6割増の218トン、中国産長ねぎは63トンと5割増し。青果売り場の主役は国内産から中国産に取って代わられた。
それと比例するように、冒頭の三谷さんのように、中国産食品に対する疑念を持つ人が増えている。
近年、世界中で、中国食品への不信感は増している。昨年10月、中国から1年間で輸入した上海がに196トンのうち、47.8トンから基準値を超えるダイオキシンが検出されたと台湾の食品当局が発表した。不合格率は実に2割以上に及ぶことから、台湾政府は輸入制限も検討しているという。
中国ではダイオキシン入りの上海がにを食べて、骨格筋の細胞が融解し筋肉が壊死する「横紋筋溶解症(おうもんきんゆうかいしょう)」になった女性の事例も報告されており、決して対岸の火事ではない。
2008年、中国製の冷凍餃子を食べた日本人10人が食中毒を起こした、いわゆる「毒餃子事件」から10年以上が経過。会社への不満から餃子に殺虫剤を混入した元従業員の男には2014年、無期懲役判決が下され、今も服役中だ。
この事件は従業員が故意に行った犯行だったが、これを契機として中国で食品を扱う環境が改善されたかといえば、実際はそうなっていないという。
『中国「猛毒食品」に殺される』(扶桑社)の著書があるジャーナリストの奥窪優木さんはこう話す。
「日本の食品会社は『食中毒を出したら会社が潰れる』という高い意識で商品管理を行っていますが、中国の場合は大きな事故を起こしたメーカーも、ほとぼりが冷めると普通に営業を続けるケースが多いのです」