「『なんとめでたいご臨終』に学ぶ笑顔で最期を迎える方法」と題し、在宅医療の名医・小笠原文雄先生が人気テレビ番組『世界一受けたい授業』(日本テレビ系 1月12日)に出演し、大きな反響を呼んでいる。余命宣告を大きく覆して生きる人、大切な家族を笑顔で見送った人…どうして自宅ではそんなことが起きるのか。がんを知り尽くす名医で、がんで妻を亡くし、自身もがんを経験した垣添忠生先生と、いつか必ず訪れる「その時」の迎え方について語り合った。誰しも死が逃れられないのだとしたら、どうせなら「なんとめでたいご臨終」してみませんか?
【プロフィール】
小笠原文雄(おがさわら・ぶんゆう)/1948年生まれ。名古屋大学医学部卒業。名古屋大学第二内科(循環器)を経て、1989年に岐阜市内に開院。現在は、小笠原内科・岐阜在宅ケアクリニック院長。在宅看取りを1000人以上経験。名古屋大学医学部特任准教授。
垣添忠生(かきぞえ・ただお)/1941年生まれ。東京大学医学部卒業。同大学医学部泌尿器科文部教官助手を務めながら、がんの基礎研究に携わる。1975年より国立がんセンター勤務。2002年、国立がんセンター総長、2007年、同センター名誉総長に。日本対がん協会会長。
◆病院と自宅の決定的な違いとは何か?
垣添:私は病院と自宅で最も違うのは「自由」だと思います。自宅なら、住み慣れた環境で自由に気ままに死ねる。私は酒が好きですから、相当悪くても酒を飲んでバタッと死ぬんじゃないかと思っています(笑い)。
小笠原:確かに。ぼくの経験でもほとんどの患者さんが家に帰るとお酒を飲まれています、本当に嬉しそうに(笑い)。
垣添:そうですよね。病院にはいろんな規則がありますからね。(国立がんセンターの)総長経験者とはいえ、やはり規則には従わないといけない。入院している妻がまだ元気な頃、立派なズワイガニをもらったので病室に持ち込んだんです。しかしこのカニを酒なしで食べるのはいかにももったいない。そこで医局から酒を持ってきて、ふたりで飲んだんです。その空き瓶をゴミ箱に捨て、翌日また酒を飲んで2本目の空き瓶を捨てたら、「病室で酒を飲まないでください!」って後で叱られちゃった(笑い)。
小笠原:ワハハハハ。さすがに夫婦の仲睦まじい宴会の最中には、看護師さんも面と向かってよう言わなかったんですね。
垣添:その点、家には病院のような規則はないですからね。退院前、「家に帰ったら夕食は何が食べたい?」と妻に聞くと「アラ鍋が食べたい」と言うので、宅配便で取り寄せ、その夜に作って出しました。
妻は抗がん剤の副作用で口内炎と食道炎がひどく、私は内心、とても食べられないだろうなと思ってたんです。でも妻は「おいしい、おいしい」と言って食べてね。いやあ、あれは在宅の奇跡だと思いました。大きい器に2杯、お代わりして食べたんです。病院では内服の痛み止めをのまないと、水やお茶も口に運べなかった彼女が、ですよ。