江戸期の高度な彫摺(ちょうしゅう)技術を後世へ継承すべく、東京伝統木版画工芸協同組合の呼びかけで浮世絵師・鳥居清長の春画の名作「袖の巻」の復刻が進んでいる。組合の高橋由貴子理事長が語る。
「『袖の巻』12図のうち10図を所蔵する国際日本文化研究センター(日文研)の協力を仰ぎ、オリジナルの版画から版下を作って、清長が描いた“生”の線を東京と京都の木版画職人十数人が復刻に挑んでいます。特に現代ではまず彫ることのない陰毛は彫師にも摺師にもその力量が試される、大きな挑戦となっています」
陰毛から春画の面白さや奥深さが感じられると語るのは、日文研・特任助教の石上阿希氏。
「陰毛が生えていないことで手習所の子供たちの睦み合いとわかるなど、細部の描写から男女の年齢や関係性が読み取れます。そして春画が絵師、彫師、摺師の三位一体でなされる高度で総合的な作品だとよくわかる。今回のプロジェクトが春画の再評価に繋がることを期待しています」
現在までに3図の復刻が完成した。2020年、現代の職人の手で江戸の名画が甦る。
◆写真/国際日本文化研究センター ◆取材・文/渡部美也
※週刊ポスト2019年1月18・25日号