「8場所連続休場」や「8連敗」など痛々しい記憶を残して土俵を去らねばならなかった横綱・稀勢の里。昇進から引退までの722日間は、日本相撲協会の打算や思惑に翻弄される日々でもあった。
世界中の注目が集まる場で、日本の国技のアピールを──。協会が見据えていたのは、来年の東京五輪での「日本人横綱」の土俵入りだった。
「かねて、白鵬は“2020年の東京オリンピックで土俵入りしたい”と夢を語ってきました。ですが、協会としては、日本人の横綱が誕生し、人気も抜群である以上、稀勢の里がやるのが一番いいという認識だった」(協会関係者)
ただ、協会がそうやって稀勢の里に肩入れするほど「相撲人気の低迷した“冬の時代”を一人で支えた自負のある白鵬が反発するのは当然」(同前)であり、稀勢の里を追い詰める結果となったのは、皮肉というほかない。
※週刊ポスト2019年2月1日号