日ロの平和条約締結に向けた協議で、北方領土を巡って“火花”が散らされている。ロシアのラブロフ外相からは「北方領土」という“呼称”を問題視する発言まで飛び出した。その真意はどこにあるのか──。
1月22日にモスクワで開かれる日ロ首脳会談を前に、平和条約締結に向けた「交渉責任者」に指名されている河野太郎、ラブロフ両外相が14日に初協議を行なった。
昨年11月に安倍、プーチン両首脳が「平和条約締結交渉を加速させる」ことで合意。期待感が高まるなかでの協議だったが、外相会談後のラブロフ氏の会見を受け、日本の新聞には悲観的な文言が並んだ。
〈ラブロフ氏は北方領土をめぐり厳しい姿勢を示した〉(14日付、日経新聞電子版)、〈進展を急ぐ日本側に強硬姿勢を突きつけた〉(15日付、朝日新聞朝刊)
各紙がそう報じた理由の一つが、日本側の用いている“呼称”についてのラブロフ氏の発言だった。
「日本の国内法で『北方領土』と規定されるのは受け入れられない」
ロシアでは、北方領土は「南クリル」と呼ばれる。日本側の呼称がそれと異なっていることをラブロフ氏が批判したというのである。たしかに、日本の国内法や政府文書、教科書などの記述をすべて「北方領土」から「南クリル」に書き変えろという要求であれば、日本としては受け入れがたい。
しかし、対ロシア外交の現場に長年、携わってきた作家・元外務省主任分析官の佐藤優氏は「ラブロフ氏が強硬論を突きつけてきたという理解は正しくありません。むしろ、交渉はどちらかといえば日本ペースで進んでいる」(以下、カギ括弧内は佐藤氏)と解説する。
一体、どういうことか。