「富士登山」や「空中ブランコ」のほか、数えきれないほどのダイエットを体験しているモデル兼肉体派ライター、“オバ記者”こと野原広子が、61才からの“職探し”を体験。派遣会社から派遣された“私語厳禁”の職場で、失敗のたび30代後半の女から、「私の話、聞いていました?」と怒られた。カッときて、「すみまっせんっ!」と謝りギレすると即刻、ミーティングが開かれ…。“黒い職場”の裏事情を見た!
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「ピアス、毛染めOK」と自由な雰囲気をうたっていたので応募したら、青い作業着を着させられ、巨大な倉庫のラインで書類の仕分け。作業着には、備品の持ち出し防止のためポケットがない。倉庫内で耳にするのは、叱責と謝罪の言葉だけだ。
私が失敗をするたび、現場を仕切る小太りの30代後半の女子社員が飛んできて、「私はそう教えましたか?」「これで3回目ですよね?」と畳みかける。
それでつい、「すみまっせぇんっ」と“謝りギレ”した私もどうかと思うよ。でも、次にとった彼女の行動がまた予想を大きく上回ったの。
◆ミスをするたび「トシだから」と弱気の虫が出る60代
「急いで集まってください」
“小太り”は午後のトイレ休憩を終えた全員に声をかけた。彼女の両側は、責任者の40代の“四角メガネ男”と、男子社員2人が固めている。
で、こっち側の派遣を数えてみると52人。ほとんどはミドルからシニア世代で、70代のシルバーも数人交じっている。
「私たちは派遣さんを感情的に怒っているのではありません。皆さんのミスは、会社の信用にかかわるから事前に防ぎたいだけなのです。でも、態度が悪いとこちらも人間ですから、感情的な言い方になってしまうのかもしれません」
“小太り”は、私の顔をチラッと見て、「話の途中で、作業を始めてしまうとか、『はい、はい』と聞き流すとか、口答えも困ります」と、まさかの泣き言だ。
すると私の隣に立っていた“60代の井川遥”が、前を向いたまま、「言いたくもなるわよ」とぽつり。彼女も、「初日にあんまり怒られて心と体がバラバラになりそうになった」と言う。
60過ぎて仕事でミスをすると、「トシだから、もうダメかも」と、若い頃は思いもしない弱気の虫がでる。「怒られると、ミスがミスを呼んで…」「私もそう」。
思えば4日間働いて、人と心を通わせたのは彼女と言葉を交わした数秒だけだった。