前出・宇多川氏もこう指摘する。
「禁断症状がなければ依存症ではないと思っている人も多いようですが、『飲まないとだるくなる』というのは薬物依存の典型的な症状。しかも服用者は依存しているとは思っていない」
加えて、従来は医師の処方箋が必要だった比較的効き目の強い一部の医薬品(スイッチOTC)が、市販薬として売られるようになった。つまり、「市販薬依存症」になりやすい素地が出来上がっているのだ。
冒頭のA氏のように、鎮痛剤を持ち歩く人は多く、痛みや熱などの兆候が出ると「とりあえず」と服用することがある。だが、過剰摂取には気を付ける必要がある。
「ロキソプロフェン、イブプロフェン、アセトアミノフェンなどを含む頭痛薬(鎮痛剤)は依存を引き起こしやすい。さらに、薬剤性の頭痛を起こしたり、慢性化を招くなど、かえって悪化させることがあります」(宇多川氏)
薬の効果がなくなってきていると感じる人はとくに注意が必要だ。重篤な副作用を起こす場合もある。
「海外の研究で、鎮痛剤を長期連用した場合、腎機能障害や肝機能障害が起きたことが報告されています。日本では、誰がどんな市販薬を買ったかを捕捉できず、データがないのが実情です」(新潟大学名誉教授の岡田正彦医師)
※週刊ポスト2019年2月1日号