スポーツ

仲間の死を乗り越えセンバツ21世紀枠へ 熊本西の戦い

悲しみを乗り越え、夢の舞台に立てるか

 平成最後の甲子園となる第91回選抜高校野球大会の出場32校が、1月25日に決定する。毎年3校が選ばれる21世紀枠で、選出が有力視されている熊本県立熊本西高校は、悲しい事故を乗り越えて、聖地での勝利を目指している。

 * * *
 熊本県立熊本西高校の硬式野球部は昨秋の熊本大会で準優勝し、九州大会でも1回戦を突破。ベスト8に終わり、一般選考でのセンバツ出場は難しくなったものの、公立で練習時間が短いハンデをものともしなかった快進撃と、日頃から小学生に野球教室を開き、田畑に囲まれる地域への貢献などが評価され、熊本県の21世紀枠推薦校に選出された。

 甲子園の夢を膨らませていた同校で、不幸な事故が起きたのは、その決定からわずか9日後だった。

 11月18日日曜日。熊本西は午前中に練習試合を行い、昼食を挟んで控え選手中心の2試合目を戦っていた。

 4回裏、熊本西の攻撃。2死走者なしから、代打として右打席に入ったのが2年生の外野手・篠田大志君だった。カウント1-1からの3球目──。

 相手右投手のストレートが篠田君の頭部付近に抜ける。篠田君は捕手方向に顔を振ってボールを避けようとした。しかし、ボールはヘルメットの左耳部分をかすめ、そして頸部を直撃する。

「いたっ!」

 篠田君はそのまま右バッターボックス付近に倒れてしまう。すぐに監督や部長、そして仲間が駆け寄ったが、篠田君は意識を失ったまま、動かない。

 横手文彦監督が即座に心臓マッサージを開始し、上田謙吾部長が救急車を呼ぶ。その時、誰かが「AED!」と叫んだ。だが、その時には既に部員のひとりが、グラウンド脇に設置されていたAEDを取りに走っていた。監督らはすぐにAEDを篠田君の肉体に取り付けたが、電気ショックの必要はないという反応。間もなく、救急車が到着した。ここまで時間にして、5分から6分ほどの出来事だったという。

 救急車には上田部長が同乗し、近隣の救急病院に到着するまで、車内では蘇生措置が行われた。病院には、保護者会長からの連絡を受けた篠田君の家族も程なくして到着した。

 だが、監督や部長、そして部員の迅速な対応も実らず、篠田君は翌19日の早朝、亡くなってしまう。死因は外傷性くも膜下出血だった。頸椎の損傷はなく、現場検証にあたった警察からは「当たり所が悪かったとしか言いようがない」との説明を受けたという。

 ショックに見舞われた熊本西の選手たちに対し、篠田君の遺族は事故によって21世紀枠の推薦校を辞退することがないように進言。そして12月14日、日本高等学校野球連盟は21世紀枠の各地区候補9校を発表し、熊本西は甲子園にまた一歩、近づいた。

◆「もし代打に送り出さなければ……」

関連記事

トピックス

すき家がネズミ混入を認め全店閉店へ(左・時事通信フォト、右・HPより 写真は当該の店舗ではありません)
【こんなに汚かったのか…】全店閉店中の「すき家」現役クルーが証言「ネズミ混入で売上4割減」 各店舗に“緊急告知”した内容
NEWSポストセブン
江口容疑者と自宅
《16歳女子高生の遺体を隠し…》「6人家族だけど、共働きのご両親が不在がちで…」江口真先容疑者(21)が実家クローゼットに死体を遺棄できた理由
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
X子さんフジ退社後に「ひと段落ついた感じかな」…調査報告書から見えた中居正広氏の態度《見舞金の贈与税を心配、メッセージを「見たら削除して」と要請》
NEWSポストセブン
ロコ・ソラーレが関東で初めてファンミーティングを開催(Instagramより)
《新メンバーの名前なし》ロコ・ソラーレ4人、初の関東ファンミーティング開催に自身も参加する代表理事・本橋麻里の「思惑」 チケットは5分で完売
NEWSポストセブン
中居氏による性暴力でフジテレビの企業体質も問われることになった(右・時事通信)
《先輩女性アナ・F氏に同情の声》「名誉回復してあげないと可哀想ではない?」アナウンス室部長として奔走 “一管理職の職責を超える”心労も
NEWSポストセブン
濱田淑恵容疑者の様々な犯罪が明るみに
【女占い師が逮捕】どうやって信者を支配したのか、明らかになった手口 信者のLINEに起きた異変「いつからか本人とは思えない文面になっていた」
週刊ポスト
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ(右・時事通信フォト)
「スイートルームの会」は“業務” 中居正広氏の性暴力を「プライベートの問題」としたフジ幹部を一蹴した“判断基準”とは《ポイントは経費精算、権力格差、A氏の発言…他》
NEWSポストセブン
大手寿司チェーン「くら寿司」で迷惑行為となる画像がXで拡散された(時事通信フォト)
《善悪わからんくなる》「くら寿司」で“避妊具が皿の戻し口に…”の迷惑行為、Xで拡散 くら寿司広報担当は「対応を検討中」
NEWSポストセブン
男性キャディの不倫相手のひとりとして報じられた川崎春花(時事通信フォト)
“トリプルボギー不倫”4週連続欠場の川崎春花、悩ましい復帰タイミング もし「今年全休」でも「3年シード」で来季からツアー復帰可能
NEWSポストセブン
騒動があった焼肉きんぐ(同社HPより)
《食品レーンの横でゲロゲロ…》焼肉きんぐ広報部が回答「テーブルで30分嘔吐し続ける客を移動できなかった事情」と「レーン上の注文品に飛沫が飛んだ可能性への見解」
NEWSポストセブン
佳子さまと愛子さま(時事通信フォト)
「投稿範囲については検討中です」愛子さま、佳子さま人気でフォロワー急拡大“宮内庁のSNS展開”の今後 インスタに続きYouTubeチャンネルも開設、広報予算は10倍増
NEWSポストセブン
中居の女性トラブルで窮地に追いやられているフジテレビ
「スイートルームで約38万円」「すし代で1万5235円」フジテレビ編成幹部の“経費精算”で判明した中居正広氏とX子さんの「業務上の関係」 
NEWSポストセブン