国内

「学習歴社会」を体現する武蔵大学、世界に飛び立つ人材育成

「学習歴社会」を体現する武蔵大学(武蔵大学提供)

 少子化で受験生が減少し続けている昨今、“大学の序列”も変容しつつある。大学情報に詳しい、大学通信常務の安田賢治さんはこう話す。

「昔は偏差値だけが序列を決める物差しでしたが、今はその“物差し”自体が変わってきています。実際、以前は私大2トップとされる早慶に憧れて記念受験をしたり、どうしても合格したくて全学部を受けたりすることもあったが、そのようなやり方をする受験生や親は減っています。その代わり、偏差値や大学名より、自分のやりたいことに即して志望校を選ぶ受験生が増えている。つまり、世の中は“どこで学んだか”が大事な『学歴社会』から、“何を学んだか”を重視する『学習歴社会』にシフトしたのです」

「学歴社会」ではない「学習歴社会」を象徴するのが、偏差値だけで考えれば決して“難関大学”ではない武蔵大学だ。

「日本の高校生の能力は世界トップクラスなのに、大学で勉強しないことを昔からもったいないと思っていました。そんな折に英・ロンドン大学のプログラムを知り、日本の大学生が世界基準の学力を得るためには絶対必要だと感じました」

 こう熱く語るのは、武蔵大学PDP教育センター長の東郷賢教授だ。武蔵大学は2015年、同大学で学びながら、ロンドン大学の学位を取得できるパラレル・ディグリー・プログラム(PDP)を日本で初めて導入した。

「世界トップレベルの総合大学であるロンドン大学と提携し、東京都練馬区にある武蔵大学のキャンパスで学んだ学生が、イギリスのロンドン大の学位を取得できるようになりました。これにより、受験生が増加したうえ、熱意ある学生が集まるようになりました」(東郷さん)

 PDPの履修生は、1年次の6~7月にフィリピン・セブ島でマンツーマン中心の英語研修を受ける。その後、数々の課題をクリアしたらロンドン大の教育プログラムの履修を始め、毎年の試験などに合格すれば、ロンドン大国際経済経営学士号を取得できる。

 当然、ロンドン大の授業として行われる科目はすべて英語で、講義や試験は日本の大学とは比べられないほどハードだが、学生たちは目の色を変えて勉強に励んでいる。

「入学を志望するのは意欲的な学生ばかりです。慶應大の総合政策学部と両方合格し、武蔵大を選んだ学生もいます。学生たちは授業がない日も大学に来て勉強するので、冬休みに図書館が閉まった時、『何で閉めるんですか。勉強する場所が欲しいんですよ』と怒られたこともあります(笑い)」(東郷さん)

 2017年4月に入学したPDPの3期生の三浦秋乃さん(20才)が目を輝かせて語る。

「PDPにはとても優秀な学生が集まっていて仲もよいのですが、負けたくないという思いもあって必死に勉強しています。また、英語で授業を受けることで語学力だけでなく、英語を使って論理的に考える力も身につきました。卒業後は海外の大学院に進み、将来は途上国のサポートに携わりたいと考えています」

 東郷さん曰く、ロンドン大の学位は「世界に通用するパスポート」とされ、海外の大学院進学や就職などで優位になる。PDP履修生たちは、練馬から世界に飛び立つために日夜、猛勉強を続けているのだ。

※女性セブン2019年2月7日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン