暴力団対策法や条例によって暴力団によるトラブルは激減したが、代わりに半グレと呼ばれる別カテゴリのグループがのさばるようになった。繁華街で問題となっていた「スカウト」も、条例によって厳しく取り締まられるようになったが、代わりに“プロ”学生がスカウトビジネスを実行している。ライターの森鷹久氏が、暴力団員でも半グレでもなく、いわゆるプロのスカウトでもない学生による、ビジネスの実態をレポートする。
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関西地方に住む複数の大学生が、女子大生に借金を背負わせ、風俗店などにあっせんしていたとして職業安定法違反(有害業務紹介)の疑いで逮捕された。報道によれば学生らは京都市内の大学に通う約20名のメンバーで構成され、路上で女子大生に声をかけては、関係者が経営する高級会員制バーなどに連れてゆき、高額な料金を請求。支払いが出来ない女子大生に対し、風俗店で働いて金を捻出するよう促していた。
さらにグループは、提携していた関西地方の複数の風俗店から、女子大生の紹介リベートとして、女性の給与の15パーセント程度を受け取っていた。逮捕容疑に関わるだけでも、紹介料などで約7300万円を得ていたという。プロの反社勢力も驚く「違法スカウトシステム」の仕組みを、学生らが作り上げていたことになる。
「関西の事件はあまりにひどいというかあからさまですが、関東でも同じような事例はありますね」
最近何かと「悪い」話題の尽きない、都内の私大イベントサークルOBは、女子大生を狙った卑劣な連中の存在を指摘する。
「日大のサークルの件でも話題になりましたが、イベントへの集客が悪いなどと言って女子大生に、借金を作らせます。ノルマ10人分、計二万円など最初は軽微な負担を強いらせるのです。二万円であれば、キャバクラで二日働けば楽に返せるから、知り合いのキャバクラを紹介する、そういってあっせんするのです」
実際に、このようなきっかけで水商売の世界に足を踏み入れる女子学生が後を絶たない。もちろん、このような経験をした女子学生の多くは、サークルに不信感を募らせ辞めていくのだが、一部の女子学生はそのままズルズルと闇に引き込まれていく。
「キャバクラには、サークル幹部の関係者が男女問わずいて、もっとたくさん稼ごうとか、ホストにいって遊ぼうとターゲットに吹き込むわけです。関西の学生たちがやっていたのと同じで、最終的にはターゲットを風俗に落とし、風俗店からのバックを得るのが目標です。ターゲットが風俗で稼いだ金をサークルに納める一方、風俗で働いた金の一部も自動的にサークル幹部に流れるという二重にオイシイ仕組み。こうした手法を知った男子学生が、これを“ビジネス”だなんだと吹きまわり、学業そっちのけで取り組んでいます」