芸能

木村佳乃の『後妻業』にアッパレ ブラックコメディの理想型

木村佳乃の突き抜けた演技が話題(番組公式HPより)

 ストーリーが売りのドラマもあれば、役者の芝居が見物の作品もある。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が指摘する。

 * * *
 いよいよ始まった期待のドラマ。木村佳乃が主演する『後妻業』(フジテレビ系火曜午後9時)です。初回(1/22)は関西地区平均視聴率が13.7%、関東地区も8.7%と数字もまずまずの好発進。

「西高東低」のスタートは、武内小夜子を演じる木村さんのコテコテ大阪弁セリフやド派手な衣装、ぶち切れた悪女ぶりに、関西視聴者の熱い興味が注がれている証拠かもしれません。

 後妻業とは、ご存じ遺産相続目当てで資産家の老人を狙う結婚詐欺女のこと。現実に起こった事件は衝撃的で、「近畿連続青酸死事件」は連日報道されました。当ドラマの原作である黒川博行著の小説『後妻業』が、事件を予言したのではと話題になったことも記憶に新しい。すでに映画化もされていて、物語の世界観は捉えやすい。

 テーマがインパクト大で、ストーリーもイメージできる。犯罪の手口にも複雑な謎解きはない。だとすれば……このドラマの見所は何といっても、「役者」そのものでしょう。

 初回が放送されると百家争鳴、さまざまな意見が飛び交い、好き嫌いがはっきりと分かれるクセの強いドラマであることが浮き彫りになりました。たしかに、木村佳乃さんの表情・役作りは半端ではない。

 美形の女優がここまでやるか、という振り切れ感。大股開きで舌を出し、結婚相手のお爺さんが倒れた時にはシャンパンを注いで大笑い。躊躇が無い。突き抜けている。小夜子の人生に陰はあれど、あっけらかんの悪女ぶり。

 木村さんの演技は「小夜子」という人物のエッセンスをがっちりと掴んでいて、芯がしっかりしている。だから、思い切り振り切れた演技も可能になる。ここまでいくと、爽快感。「悪役とは、演技にためらいがあってはならない」という教訓が見てとれるようです。

 昨今のコメディドラマの多くは、小手先でふざけて笑いをとろうとしたり、演技する側の「笑わせよう」という自意識が見え隠れするけれど、それほど白けるものはない。

 演技する側はとことん大真面目に役を突き詰めていく。その結果として、じわりと滑稽さが滲み出してきて、それが見ている人の笑いを誘う──ブラックコメディドラマの理想型ではないでしょうか?

 このドラマが本当に理想に届くかどうかは、今後お手並み拝見ですが、少なくとも「笑わそうという自意識が見えない」ほど役に没入している木村さんにアッパレです。

関連記事

トピックス

紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
大村崑氏
九州場所を連日観戦の93歳・大村崑さん「溜席のSNS注目度」「女性客の多さ」に驚きを告白 盛り上がる館内の“若貴ブーム”の頃との違いを分析
NEWSポストセブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
佐々木朗希のメジャー挑戦を球界OBはどう見るか(時事通信フォト)
《これでいいのか?》佐々木朗希のメジャー挑戦「モヤモヤが残る」「いないほうがチームにプラス」「腰掛けの見本」…球界OBたちの手厳しい本音
週刊ポスト
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン