警察の内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た警官の日常や刑事の捜査活動などにおける驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、我々も映画などでは目にしたことがあるヤクザの指詰めの実態について。
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「まな板の上でノミか包丁でパン!と叩くと、ポーンと飛ぶ」
飛んでいったのは落とされた小指。想像するだけでゾワッと背筋が寒くなるが、稼業の世界では今もこの指詰めが行われている。
一般人にとって、指詰めは任侠ドラマやヤクザ映画の中のことでしかない。だがヤクザや暴力団員にとっては、ミスや不始末に対してケジメをつけるための1つの方法だ。その作法や実態とはどんなものなのか、暴力団幹部に聞いてみた。取材場所は都内の喫茶店。周りに人がいない席を選んで座る。
「指詰めは今だってある。昔ほどではないけどね」
そう語る暴力団幹部の手には指が揃っているが、指詰めの介添えをしたことは何度かあるという。
「方法なんて簡単。まず、落とす指の根元を輪ゴムでしっかり縛る」
彼らは指を詰めるとは言わない。指を“落とす”と言う。
「3~4分もすれば、血が溜まって固まって、感覚がなくなる」
根元を縛られた指はうっ血して色が変わり、ヒンヤリと冷たくなり、次第に感覚がなくなってくる。
「感覚がなくなれば、まな板の上に手をのせて、パン!」
そう言いながら、暴力団幹部は手刀を振り下ろした。
「ポーンて飛ぶんだよ、指先が。40センチくらい。けっこう飛ぶ」
切られた指が宙を飛ぶというのも怖いが、稼業の世界にいれば、それにも慣れてくるのだろう。
「5分もあれば終わるよ」
5分と聞いてその短さに驚いた。よほど目を丸くしたのだろう、暴力団幹部がこちらを見て笑い出す。
「5分というのは介添えがいればの話でね。1人でやろうと思えば、さすがに心づもりが大変だ」
誰かに切断してもらえれば、指から目をそらすこともできるし、力まかせにパン!で一気に済む。だが1人で切断しようとすればそう簡単にはいかない。これから落とす指をじっと見つめ、その指にノミを当て一思いにと心を決めても、落とし損ねたら…と思うとノミを握る手が震えてくるという。
「すっぱり落としても、その後が問題でね」
切断した後の問題とは何だろう?
「指をいつ持って行くか。病院に行く前に親(親分や親方)に持って行くか、病院に行った後に持って行くか…。行く前に持って行けば、『バカなことをしたな。早く病院に行ってこい』となる。病院に行った後に持って行けば、だいたいは『バカ野郎、なんで先にこっちに来ないんだ』と怒鳴られる」
ここで、その人間の覚悟や資質が問われることにもなるらしい。せっかく指を落としたのに、ここを間違うと全てが水の泡になる。
「指を落とす理由はいろいろ。自分のミスや不始末だけでなく、昔は人のために指を落としたからね。自分の義兄弟、組の若い衆ために指を落とした。今では人のために指を落とすことはない。そんな義理人情は今は残っちゃいないよ」