国内

人気高まる地方の「公立化」大学 倍率33倍超の学部も

福知山公立大学の地域フィールドワーク

 少子化が進み、大学進学者が減少している昨今、大学のあり方も変容している。かつては、大学名を重要視する「学歴社会」だったものが、大学名ではなく大学で何を学ぶかを重視する「学習歴社会」へとシフトしつつあるという。さらに、東京の大学への一点集中もなくなりつつある。大学情報に詳しい、大学通信常務の安田賢治さんはこう話す。

「かつては地元の国立大に受かっても、『私立でいいから東京の大学に行きたい』という学生が多かった。しかし少子化とともに地元密着が進み、親の頼み通りに地元に残る子供が増えたうえ、不況もあって金銭的な理由で地元の国公立大学を選ぶ傾向が強くなりました」

 さらに近年、文部科学省は私大の合格者を絞り込む施策を進めている。実際、ここ2年で早稲田大は3000人以上、立命館大は約7000人定員を減らしている。このように、都市圏の私大の入試の難化も、「地方復権」の理由の一つとされる。

 地方の公立大学のなかで、ひときわ注目されるのは、2004年に秋田県秋田市に開校した国際教養大学だ。

「国際社会に貢献できる人材育成」を教育目標に掲げて授業はすべて英語で行い、卒業するには海外留学が必須だ。

 人材育成の評価は高く、学内で行われる企業説明会には大手を中心に約200社の採用担当者が参加する。大手予備校の東進ハイスクールを運営するナガセの常務執行役員の市村秀二さんは言う。

「キャンパスは秋田市郊外にありますが、ほぼ全都道府県から学生が集まります。早慶と両方受かった東進ハイスクールの受講生の半数以上が早慶ではなく国際教養大に進学しています」

 同大学のようにもともと公立だった大学だけでなく、“公立化した元私大”にもスポットが当たっている。

 JR京都駅から電車で77分のところにある福知山市内に、2016年4月に私学の成美大を公立化してリスタートした福知山公立大学がある。

 学部は地域経営学部のみで、全学生数約360人の小さな大学だが、公立化した2016年度の入学志望者は定員50人に対して1669人に達した。当時の倍率は33.38倍で、その後も高い倍率を維持している。

 同大学学務・学生支援グループ入試係の中尾智さんは、同大学に人気が集まった理由をこう捉えている。

「公立化で年間約99万円の学費が約58万円になったことと、京都府という立地から志望者が多いと考えられます。また2017年度の入学者は約58%が人口10万人以下の自治体出身。“故郷と似た地域環境の大学で地域の持続可能性を学びたい”という学生が多く入学しています」(中尾さん)

関連キーワード

関連記事

トピックス

高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン