少子化が進み、大学進学者が減少している昨今、大学のあり方も変容している。かつては、大学名を重要視する「学歴社会」だったものが、大学名ではなく大学で何を学ぶかを重視する「学習歴社会」へとシフトしつつあるという。さらに、東京の大学への一点集中もなくなりつつある。大学情報に詳しい、大学通信常務の安田賢治さんはこう話す。
「かつては地元の国立大に受かっても、『私立でいいから東京の大学に行きたい』という学生が多かった。しかし少子化とともに地元密着が進み、親の頼み通りに地元に残る子供が増えたうえ、不況もあって金銭的な理由で地元の国公立大学を選ぶ傾向が強くなりました」
さらに近年、文部科学省は私大の合格者を絞り込む施策を進めている。実際、ここ2年で早稲田大は3000人以上、立命館大は約7000人定員を減らしている。このように、都市圏の私大の入試の難化も、「地方復権」の理由の一つとされる。
地方の公立大学のなかで、ひときわ注目されるのは、2004年に秋田県秋田市に開校した国際教養大学だ。
「国際社会に貢献できる人材育成」を教育目標に掲げて授業はすべて英語で行い、卒業するには海外留学が必須だ。
人材育成の評価は高く、学内で行われる企業説明会には大手を中心に約200社の採用担当者が参加する。大手予備校の東進ハイスクールを運営するナガセの常務執行役員の市村秀二さんは言う。
「キャンパスは秋田市郊外にありますが、ほぼ全都道府県から学生が集まります。早慶と両方受かった東進ハイスクールの受講生の半数以上が早慶ではなく国際教養大に進学しています」
同大学のようにもともと公立だった大学だけでなく、“公立化した元私大”にもスポットが当たっている。
JR京都駅から電車で77分のところにある福知山市内に、2016年4月に私学の成美大を公立化してリスタートした福知山公立大学がある。
学部は地域経営学部のみで、全学生数約360人の小さな大学だが、公立化した2016年度の入学志望者は定員50人に対して1669人に達した。当時の倍率は33.38倍で、その後も高い倍率を維持している。
同大学学務・学生支援グループ入試係の中尾智さんは、同大学に人気が集まった理由をこう捉えている。
「公立化で年間約99万円の学費が約58万円になったことと、京都府という立地から志望者が多いと考えられます。また2017年度の入学者は約58%が人口10万人以下の自治体出身。“故郷と似た地域環境の大学で地域の持続可能性を学びたい”という学生が多く入学しています」(中尾さん)