がんを早く見つけたいから検査を受ける。問題なければ安心する。しかし、それは必ずしも「がんではない」ことを意味しない。“見落とされた”というケースは、「例外」と済ませられないほど多いのだ。まず、都内在住の65歳男性のケースを紹介する。
「10年前に大腸にできたポリープを取ってから、自治体の『がん検診』を毎年欠かさず受けてきました。それからずっと異常なしだったのですが、今回は大腸に『陽性』が出たんです。
その時は“またポリープかな”と思っていたのですが、精密検査を受けると、医師から『進行している大腸がんです。2年前には見つかっていておかしくないサイズです』と告げられ、すごくショックでした。どうしてもっと早く見つからなかったのでしょうか……」
1月に発表された厚労省の最新統計で、男女合わせた新たな患者数が最多の15万8127人となった大腸がん。食生活の欧米化などが原因で増加し続けているという。
大腸がんは、早期に発見すれば治癒可能で、I期の5年生存率は97.6%に達する。しかし、進行するまで自覚症状がないことがほとんどだ。
そのため、早期発見には検診が重要となる。よく知られているのが、自治体が公費で行なう大腸がん検診(40歳以上対象)や、個人が自己負担で受ける人間ドックなどで広く実施されている「便潜血検査」だ。便の表面を擦って採取した検体を専用の容器に入れて医療機関に提出する、いわゆる「検便」のことだ。とよしま内視鏡クリニック院長の豊島治医師が解説する。