ZOZOの前澤友作社長が、起業家のイーロン・マスク氏が立ち上げたスペースX社と契約し「月旅行に行く」ことを発表したのは昨年9月。費用は数百億円かかると報じられ、多くの人を驚かせた。それから数か月。富裕層の一部で、「月に行こう」という言葉が流行しているという。コラムニストの吉川リサコ氏がリポートする。
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これまで、たくさんの経営者と会ってきた。夜、お酒が入る席で会うことが多いからか、だいたい本性が見えてくる。その経験から言えば、成功して富裕層の仲間入りをした経営者には、ひとくせも、ふたくせもある人が少なくない。もっとわかりやすく言えば、“イタい”人が多い。
私を含め、多くのハイスペック男性と出会う港区女子は、イタい人をなるべくかわしつつ飲み会をこなすことになるが、4~5人と飲むと、どうしても1人は紛れ込む。そんな人の間で多くなったのだ。口説き文句が「一緒に月に行こうよ」──。
有名デザイナーでIT企業の取締役も務めているカツヤとは、彼の自宅である某ヒルズのホームパーティで会った。Uber Eatsで運ばれてきた高級寿司や有名なサラダショップのサラダ、タコスなどがテーブルに並ぶ。港区の夜景が大きな窓に広がるこの部屋は、きっと家賃100万円は下らない。イケメンでもないが爽やかな見た目。そんなカツヤが最初からターゲットにしていたのが、港区女子仲間のサヤカだった。
乾杯の後、「よくこういうパーティ来るの?」そう問われて、まあまあと受け流すサヤカに「俺んちの観葉植物、育ってるっしょ? 俺さ、観葉植物と話せちゃうんだよね」。ああ~、クセ強い系か。「長年付き合うと、阿吽の呼吸で大体のことわかっちゃうじゃん? 観葉植物も同じでさ」と続ける。
サヤカは六本木の有名キャバクラでナンバーワンだった時期もあるが、今はアパレルショップを経営している実業家。トリンドル玲奈っぽいパッチリ二重で、男ウケは抜群だ。観葉植物トークにはあまりリアクションしていない。
カツヤの自慢はAIスピーカーに移る。「うちさ、Ok Googleもアレクサもあるんだよね。Ok Google、音楽かけて!」。しかし、数回点滅したまま起動しなかった。「仕方ないな、俺アレクサ派だからさ。アレクサ、音楽かけて!」──ようやくBGMっぽい音楽が流れてきたが、少し滑稽な姿だった。
そしてパーティの後半、この言葉が飛び出した。「俺さ、宇宙に憧れてんだよね。一緒に月に行かない? 連れてくよ?」──。
サヤカとこっそり「月、出たね」と話していると、サヤカは最近も別の男から「月に行こう」と言われたという。その別の男は既婚者で、口説き文句が凄かった。