家族を養っていた人物が突然亡くなった時、残された家族にとって大事なのが生命保険。ただし生命保険にも色々な種類があり、個人ではなく会社の保険にしか加入していなかった場合、何とか夫の保険金を分けてもらうことはできないのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
女性読者です。再婚して1年も経たないうちに、自営業の夫が病死したのですが、個人的な生命保険の類には加入しておらず、会社の保険だけでした。そこで保険金を分けてもらえるよう共同経営者の方にお願いしたら、あっさり拒否。この場合、妻の私にも保険金が入るような法的な手助けはないですか。
【回答】
ご主人は共同経営者として会社の取締役をしておられ、ご主人を被保険者、受取人を会社とする生命保険に入っていたものと思います。これは「経営者保険」といい、保険金は会社に支払われます。
ご主人が被保険者であっても、当然に保険金の分配を求める権利は生じません。あなたが取締役の相続人として会社に対し、請求できる根拠が必要です。そのよすがになるのは退職慰労金となります。
経営者保険は、死亡取締役の退職慰労金の財源確保が目的で締結されることが多く、また、それに限らず、対外的信用を担っていた取締役の死亡で取引が難しくなったり、金融債務の期限の延長が断わられるなど、経営に支障をきたす可能性があり、その経済的困難に対する備えの意味があります。あるいは、支払保険料が損金計上できることから、法人税対策を兼ねている場合も考えられます。