平成史を振り返る上で見逃せない「北朝鮮による日本人拉致問題」が国会で取り上げられたのは平成9年(1997年)のことだったが、国際情報誌・SAPIOはそれ以前から拉致の疑いについて報じてきた。同誌は、激動の平成をスクープ記事と深い検証記事で伝えてきた。その記事から平成8年~現在の出来事を振り返る。
●金賢姫からのメッセージ【平成8年】(1996年6月12日号、連載エッセイ『煉獄を越えて』開始)
1987年の大韓航空機爆破事件の実行犯、金賢姫は死刑判決を受けるが後に特赦された。韓国人となった彼女のソウル生活が8年に及んでいた頃、連載開始。北朝鮮で彼女の日本語教育係だった李恩恵について触れ、それが日本人、田口八重子さんであることを日本の警察も把握していると指摘。彼女の救出を訴えた。西村眞吾氏が国会で北朝鮮による日本人拉致を取り上げ、大手マスコミが大々的に報じるのは翌1997年のこと。
●北朝鮮「日本人拉致」問題【平成11年】(1999年6月23日号、拉致被害者家族インタビュー)
1997年5月に日本政府は横田めぐみさんら、「7件10人が北朝鮮に拉致された疑いが濃い」と発表したが、救出に向けた動きは鈍かった。ジャーナリスト・落合信彦氏が蓮池薫さん、奥土祐木子さんの両親を取材。二人は1978年に柏崎の海岸近くで行方不明になっていた。残された家族はこれまで味わった苦しみと北朝鮮に対する憤り、そして腰の重い日本政府の対応に怒りを露わにした。北朝鮮で結婚した二人が帰国できたのは2002年。