《がん検診を受けない人は、喫煙者や運動不足の人と同様に、総死亡率が高い》──2018年末、アメリカ国立がん研究所が発表した研究結果は、検診の重要性を裏付けるものだった。
そう聞けば、「やっぱりがん検診は受けた方がいい」と、家の近くにある人間ドックや病院の門をたたく人も多いのではないだろうか。しかし、国立がん研究センター検診部長の中山富雄医師は「待った」をかける。
「検診は、ただやみくもに受ければいいというわけではありません。よりすぐりの経験豊富な医師が集まる施設もあれば、そうでないところもあります。施設によっては、せっかく検診を受けても、病変が見逃されてしまう可能性もある。検査検診は、診断する医師の腕次第という部分も否めないのです」(中山さん)
◆「胸に聴診器を当てる」という“儀式”
同じ検診内容でも、検査する医師によって、判断が分かれることがある。東京ミッドタウン先端医療研究所の森山紀之医師は、「画像診断によって判断される検査はすべて、医師の腕に左右されるといっていい」と断言する。
「代表的なのはX線検査。具体的には胸部X線検査や、胃のバリウム検査、乳がんのマンモグラフィー検査などが該当します。そのほか、CTやMRI、大腸や胃の内視鏡検査、超音波検査も画像診断に相当します。超音波は『エコー』とも呼ばれ、乳がんのエコー検査も該当します。それらは力量のない医師にあたってしまうと、病変が発見できないことがある。経過観察とすべきなのに、見逃してしまうこともあります。
一方で、血液検査や血圧の値のように結果が数値化されているものは、数値が正常か否かで診断できる。腕は関係ありません」(森山さん)
近年、画像診断の「見落とし」のニュースが後を絶たない。2018年、千葉大病院で9名の患者に画像診断ミスがあり、横浜市立大学病院、河北健診クリニック(東京・杉並)でも見落としが発生。その結果、患者が死亡する事故も起きている。
医療経済ジャーナリストの室井一辰さんも「画像診断は医師によってばらつきがある」と話す。
「普段から勉強し、画像をたくさん見て診断している医師ほど腕はいい。病院によっては、院内で画像診断の勉強会を頻繁に開催しているところもあるし、勉強会すらない病院もあります。勉強会があっても、積極的に参加する医師とそうでない医師もいるので、おのずと技術力に差が出てくるのは当然です」(室井さん)