スポーツ

大坂なおみの口癖「なんか」に彼女の強さが表れている

大坂なおみは柔らかさも魅力(Sipa USA/時事通信フォト)

 大坂なおみは、厳しい生存競争を強いられるプロフェッショナルな個人競技の世界において、強くてかつ誰からも愛される稀有なタイプのアスリートだ。作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏が分析した。

 * * *
「この大会は本当にちょっとびっくりしました。でも、なんか勝ちました」

 テニス全豪オープンで優勝した翌日、トロフィーを持って記者会見の場に立つ大坂なおみ選手はそう言いました。

「なんか勝ちました」

 世界最高峰の4大大会で優勝し世界ランキング1位の選手がこの言い回し。まさしく大坂さんならでは、の「なおみワールド」です。

 そう、「なんか」は彼女の特徴。「なんかありがとうございます」「なんか疲れた」「なんか難しかった」……「大坂なおみのなんか劇場」の面白さと奥深さに心打たれた人は、多かったのではないでしょう。

 ご本人にとっては習慣的な言い回し、あるいはクセなのかもしれません。しかしその表現に、「なんか深い」ヒントも潜んでいそうです。言ってみれば、彼女のプレースタイルやメンタルのあり方までを表しているものが……。

「なんか」という言葉には、まずゆるさがあります。「勝ちました」「優勝しました」とストレートに語るよりも、ふわりと柔らかい印象を与えます。余韻も生まれます。いわばワンクッション。一瞬の間と距離、あるいは緩衝体のようなものかもしれません。

 決勝戦の第2セット、もう少しで勝利に手が届きかけた時。クビドバ選手に猛追され、逆転されてセットを失ってしまった。一瞬いらついたかに見えた大坂選手でしたが、即座にトイレットブレイクをとり、次の第3セットは冷静にコートに入りそして優勝。

 あのブレイクの時に何を考えていたのかという質問に、「世界で一番の選手と闘っているのだから、謙虚にならなければ、と思いました」と回答。

 まさに、勝負の場の熱中から一歩引くことができている。俯瞰的な視点がある。コートの中で勝負に没入しているだけではなく、鳥のように高い場所から、いわば第三者となって自分自身を見つめる視線。

 だから「クビドバという素晴らしい選手と対峙している自分」という客観性を取り戻し冷静になれたのではないでしょうか。

「なんか」の持つやわらかさ、距離感とも通じています。いわば一歩引いて、余白を保つことができるセンスとでも言えばよいのでしょうか。それが大坂選手をより強くしているのかもしれません。

関連キーワード

関連記事

トピックス

田村瑠奈被告(右)と父の修被告
「ハイターで指紋は消せる?」田村瑠奈被告(30)の父が公判で語った「漂白剤の使い道」【ススキノ首切断事件裁判】
週刊ポスト
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
暴力団幹部たちが熱心に取り組む若見えの工夫 ネイルサロンに通い、にんにく注射も 「プラセンタ注射はみんな打ってる」
NEWSポストセブン
10月には10年ぶりとなるオリジナルアルバム『Precious Days』をリリースした竹内まりや
《結婚42周年》竹内まりや、夫・山下達郎とのあまりにも深い絆 「結婚は今世で12回目」夫婦の結びつきは“魂レベル”
女性セブン
騒動の発端となっているイギリス人女性(SNSより)
「父親と息子の両方と…」「タダで行為できます」で世界を騒がすイギリス人女性(25)の生い立ち 過激配信をサポートする元夫の存在
NEWSポストセブン
宇宙飛行士で京都大学大学院総合生存学館(思修館)特定教授の土井隆雄氏
《アポロ11号月面着陸から55年》宇宙飛行士・土井隆雄さんが語る、人類が再び月を目指す意義 「地球の外に活動領域を広げていくことは、人類の進歩にとって必然」
週刊ポスト
九州場所
九州場所「溜席の着物美人」の次は「浴衣地ワンピース女性」が続々 「四股名の入った服は応援タオル代わりになる」と桟敷で他にも2人が着用していた
NEWSポストセブン
初のフレンチコースの販売を開始した「ガスト」
《ガスト初のフレンチコースを販売》匿名の現役スタッフが明かした現場の混乱「やることは増えたが、時給は変わらず…」「土日の混雑が心配」
NEWSポストセブン
希代の名優として親しまれた西田敏行さん
《故郷・福島に埋葬してほしい》西田敏行さん、体に埋め込んでいた金属だらけだった遺骨 満身創痍でも堅忍して追求し続けた俳優業
女性セブン
佐々木朗希のメジャーでの活躍は待ち遠しいが……(時事通信フォト)
【ロッテファンの怒りに球団が回答】佐々木朗希のポスティング発表翌日の“自動課金”物議を醸す「ファンクラブ継続更新締め切り」騒動にどう答えるか
NEWSポストセブン
越前谷真将(まさよし)容疑者(49)
《“顔面ヘビタトゥー男”がコンビニ強盗》「割と優しい」「穏やかな人」近隣住民が明かした容疑者の素顔、朝の挨拶は「おあようございあす」
NEWSポストセブン
歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
天皇陛下にとって百合子さまは大叔母にあたる(2024年11月、東京・港区。撮影/JMPA)
三笠宮妃百合子さまのご逝去に心を痛められ…天皇皇后両陛下と愛子さまが三笠宮邸を弔問
女性セブン