水道民営化法案の成立目前に“仕掛け人”とされた官房長官補佐官が突如として辞任──奇しくも、野党がその補佐官と外資水メジャーとの関係を追及しようとしていた矢先のことだった。政権はこの出来事をまるでなかったかのように、民営化を全国で推進しようとしている。この重大疑惑は、このまま封じられていいのか。ノンフィクション作家・森功氏がレポートする。(文中敬称略)
* * *
コンセッション(民間企業への運営委託)という名の公共事業の民営化。その旗振り役が、「未来投資会議」委員の竹中平蔵東洋大学教授(元総務大臣)であり、その懐刀である前官房長官補佐官の福田隆之だ。
竹中が参画する未来投資会議は、第二次安倍晋三政権で設置された産業競争力会議をパワーアップさせた政府委員会で、議長は日本経済再生本部の本部長を兼務する内閣総理大臣の安倍晋三。小泉純一郎政権のとき、オリックス会長の宮内義彦とともに規制改革の司令塔と呼ばれた竹中が、安倍政権でも再び同じ任を担う。ちなみに竹中は、関空コンセッションの中心であるオリックスの社外取締役を務めている。
この竹中の腹心である福田もまた、関空コンセッションのアドバイザー企業「新日本有限責任監査法人」検討チームのリーダーだった。そこを外されたあとの2016年1月、官房長官補佐官に抜擢され、関係者を驚かせた。
そんな竹中・福田ラインが、空港とともに旗を振ってきたもう一つの目玉政策が、上下水道のコンセッションである。ひと足先に昨年4月、下水道コンセッションが静岡県浜松市でスタート。上水道コンセッションが遅れたのは、水道法の改正が必要だったからで、昨年末の臨時国会で審議入りし、物議を呼んだのは記憶に新しい。
さらに、その臨時国会を控えた矢先、キーマンの福田官房長官補佐官を名指しで批判した“怪文書”騒動のサワリは、本連載の第1回で書いた通りだ。福田はそのさなかの11月9日、唐突に補佐官を退任。水道コンセッション実現を目前にした突然の退任について、「業務に区切りがついたため」という菅義偉官房長官の会見を鵜呑みにした永田町の住人はいない。