病気になったら医療費に関して漠然とした不安を抱くが、本当に怖いのは「お金がかかること」よりも「治療費の総額がいくらかかるかを知らないこと」だ。72歳の男性はこう語る。
「昨年末に『ステージIの胃がん』と宣告されました。病院では、手術費用やリスク、入院費については説明してくれましたが、闘病を続けていくにあたって『治療費の総額がいくらかかるか』については誰も教えてくれない。
病状がどうなるかによって違ってくるのは理解していますが、もし再発してしまったらどんな治療が必要になって、費用はいくらかかるのか。そう考えると不安は尽きません」
日本には、患者の医療費の自己負担が3割で済む公的医療保険に加え、患者の自己負担額に一定の上限を設ける「高額療養費制度」がある。同制度は、保険適用の治療を対象として、1か月に支払った医療費の自己負担額(3割負担)が一定の限度額を超えた場合、超過分が払い戻される仕組みだ。
限度額は年齢や年収によって異なるが、70歳未満で年収370万~770万円の人なら、医療費が月額100万円かかったとしても、自己負担は月額10万円ほどに抑えられる。
たとえば“夢のがん新薬”といわれるオプジーボも、当初こそ高額な薬価がネックとされたが、現在では、一部のがんで保険適用の対象になっており、高額療養費制度が利用できる。ウェブサイト「がん治療費.com」を運営する笠井篤氏が語る。