偽ブランド品を「そういうファッション」だと売りさばく業者が存在する。若者たちは少し前まで、それが偽物ではなくファッションだと思って受け入れてきたが、最近では一段階すすみ、「偽物でもわからないから」購入する人が少なくない。偽物を持つのは恥ずかしいという気持ちは、コピー天国と呼ばれる中国からの人々のほうが強いようだ。ライターの森鷹久氏が、偽ブランド品をめぐる意識の変化についてレポートする。
* * *
「あったー! やっぱ超かわいい!」
「”コレ”と比べても全然わかんなくない?」
女子高生らしき若い女の子二人がショッピングを楽しんでいたのは、東京・渋谷区内の雑居ビルにあるアパレル店。一見すると「セレクトショップ」と呼ばれるような、様々なブランドの雑多なアイテムが並ぶ「オシャレな店」だが、一部の商品には値札が付いていない。それどころか、入り口には店名の看板すら確認できず、店員はアジア系の外国人で、拙い日本語で言葉少なに最低限の接客をするのみだ。買い物を終え、店を出てきた女の子A子さんとB子さんに話を聞いてみると…。
「偽モノなんですよね(笑)。今日買ったのは“バレンシアガ”のキャップ。実はB子が本物を持っていたので比べて見て、全然わかんないから買っちゃいました。値段は5000円だったのを4200円に値切って買いました」(A子)
「本当は4万くらいするんですけど、偽物でもぜんぜんわかんない。見た目的に可愛ければ、何年も使うものじゃないし、偽物でも別にいいのかなって感じます」(B子)
同店には高級ブランド「バレンシアガ」の他にも、若者に絶大な人気を誇る「シュプリーム」、スポーツブランド「フィラ」や「チャンピオン」のロゴが施されたアイテムが並んでいるが、その全てが偽物だ。店員にただしてみても「中国からの輸入品」とだけ説明し、正規品かどうかの問うと「わからない」と言ったきり、店の奥へと引っ込んでしまった。都内の中古ブランド品店の店長が次のように訴える。
「昔からヴィトンやグッチなどの偽高級ブランド品が多く流通し、中高生など若者を中心に出回っていました。この流れは今も変わりませんが、最近はナイキやフィラ、チャンピオンなど、それほど高価ではないスポーツブランドの偽物も多数出回っており、正規品の半額以下で安価に購入できるために、若者の購入が後を絶ちません」(中古ブランド品店店長)
筆者も中高生時代に、不良の同級生からヴィトンやグッチ、プラダの偽財布を買わないかと持ち掛けられたことがあった。「ニセモノは恥ずかしい」という気持ちもあり購入しなかったが、一部の友人は我先にと買い求め、制服ズボンの後ろポケットに差し込んだ長財布の「ブランドロゴ」を誇ったりもした。もちろんそれらは、暴力団員などが不良に命じ販売させていたもので、反社勢力の資金源になっていたのだから、偽ブランド品を持つこと自体「危ない行為」であることに他ならなかったのである。ただし、最近は偽ブランド品を取り巻く事情が、当時とは少し違っているようだ。