芸能

米歌姫の「七輪」騒動が炙り出したネット民のタチの悪さ

アリアナ・グランデは大の親日家だった(AFP=時事)

 ネットやSNSがコミュニケーションのあり方を変えたのは事実。だが今日も“騒動”はそこかしこで起こっている。コラムニストの石原壮一郎氏が指摘する。

 * * *
 アメリカの超人気歌手アリアナ・グランデは、つい最近まで大の親日家でした。何年も前から熱心に日本語を学び、日本語が書かれたグッズも販売し、日本に住んでもいいとさえ思っていたとか。なんて嬉しくて、ありがたいことでしょう。

 そんなアリアナが、漢字で彫ったタトゥーをきっかけに、すっかり日本嫌いになってしまいました。そう、「七輪」騒動です。この騒動を知った多くの日本人は、恥ずかしいというか情けないというか、ひたすらお詫びしたいと思ったことでしょう。SNSやネットのダメなところを凝縮したような出来事でした。

 ざっと経緯をご説明します。彼女は1月下旬、手のひらに「七輪」とタトゥーを入れた写真をインスタグラムにアップ。新曲“7 rings”の発売を記念して入れたもので、「7つの指輪」を縮めて「七輪」と彫ったようです。

 たしかに日本人としては、コンロの七輪を連想してしまいますが、まあ微笑ましい話ではありませんか。日本人が着ているTシャツにプリントされた英文にも、アメリカ人やイギリス人が見たら吹き出すような言い回しが山ほどあることでしょう。ところが、彼女に対して「日本のバーベキューグリルだ」といった余計なお世話の指摘が殺到します。

 そこで彼女は「七輪」の下に「指♡」という文字を追加。すると反応があったことに調子づいたのか、ますます勢いよく「七輪指みたいで変だ」といった失礼な声が寄せられます。さらには「浅はかで、文化の盗用だ」「私は日本人だけど、日本のことをよく知らない人に使ってほしくない」といった批判もあったとか。こうなると、言いがかり以外の何ものでもありません。

 すっかりウンザリしたアリアナは、ツイッターにこう投稿しました。

「私が漢字を使うことができないのは明らかでしょ。私にどうしろって言うの。(日本語への)愛と感謝があってやったことなのに。私に何を言ってほしいの?」

「このようなミスをしても、気にしない人がいるのは分かる。でも、私はとても気にしてしまう。私に何をしてほしいの? 何て言ってほしいの? マジで」

「すごく心配になっちゃった(笑) 私は人を傷つけることが嫌い。このアプリ(ツイッター)にいる人は、純粋なミスをした人に対して許すことはできないみたい。自分のことしか考えないのね」

 お怒りはごもっともです。もちろん、くだらないことを言ってくるフォロワーは、ごく一部に過ぎません。しかし、彼女のフォロワーは6000万人を超えているので、いわゆるクソリプやクソコメの数も半端ではなかったはず。さぞ深く傷ついたことでしょう。

 今回のアリアナ「七輪」騒動は、ネット民のタチの悪さをあらためて炙り出してくれました。今日もネット上では、遠慮なく攻撃できる「悪者」を探しては、正義の味方気取りで罵倒しまくる醜い光景が繰り広げられています。匿名をいいことに誰かを攻撃している人は、それで溜飲が下がったり偉くなった気分を味わったりしているのでしょうか。だとしたら、ずいぶん卑しい了見だし、ずいぶん物悲しい話です。

関連記事

トピックス

歌舞伎俳優の中村芝翫と嫁の三田寛子(右写真/産経新聞社)
《中村芝翫が約900日ぶりに自宅に戻る》三田寛子、“夫の愛人”とのバトルに勝利 芝翫は“未練たらたら”でも松竹の激怒が決定打に
女性セブン
胴回りにコルセットを巻いて病院に到着した豊川悦司(2024年11月中旬)
《鎮痛剤も効かないほど…》豊川悦司、腰痛悪化で極秘手術 現在は家族のもとでリハビリ生活「愛娘との時間を充実させたい」父親としての思いも
女性セブン
ストリップ界において老舗
【天満ストリップ摘発】「踊り子のことを大事にしてくれた」劇場で踊っていたストリッパーが語る評判 常連客は「大阪万博前のイジメじゃないか」
NEWSポストセブン
紅白初出場のNumber_i
Number_iが紅白出場「去年は見る側だったので」記者会見で見せた笑顔 “経験者”として現場を盛り上げる
女性セブン
弔問を終え、三笠宮邸をあとにされる美智子さま(2024年11月)
《上皇さまと約束の地へ》美智子さま、寝たきり危機から奇跡の再起 胸中にあるのは38年前に成し遂げられなかった「韓国訪問」へのお気持ちか
女性セブン
野外で下着や胸を露出させる動画を投稿している女性(Xより)
《おっpいを出しちゃう女子大生現る》女性インフルエンサーの相次ぐ下着などの露出投稿、意外と難しい“公然わいせつ”の落とし穴
NEWSポストセブン
田村瑠奈被告。父・修被告が洗面所で目の当たりにしたものとは
《東リベを何度も見て大泣き》田村瑠奈被告が「一番好きだったアニメキャラ」を父・田村修被告がいきなり説明、その意図は【ススキノ事件公判】
NEWSポストセブン
結婚を発表した高畑充希 と岡田将生
岡田将生&高畑充希の“猛烈スピード婚”の裏側 松坂桃李&戸田恵梨香を見て結婚願望が強くなった岡田「相手は仕事を理解してくれる同業者がいい」
女性セブン
電撃退団が大きな話題を呼んだ畠山氏。再びSNSで大きな話題に(時事通信社)
《大量の本人グッズをメルカリ出品疑惑》ヤクルト電撃退団の畠山和洋氏に「真相」を直撃「出てますよね、僕じゃないです」なかには中村悠平や内川聖一のサイン入りバットも…
NEWSポストセブン
注目集まる愛子さま着用のブローチ(時事通信フォト)
《愛子さま着用のブローチが完売》ミキモトのジュエリーに宿る「上皇后さまから受け継いだ伝統」
週刊ポスト
イギリス人女性はめげずにキャンペーンを続けている(SNSより)
《100人以上の大学生と寝た》「タダで行為できます」過激投稿のイギリス人女性(25)、今度はフィジーに入国するも強制送還へ 同国・副首相が声明を出す事態に発展
NEWSポストセブン
連日大盛況の九州場所。土俵周りで花を添える観客にも注目が(写真・JMPA)
九州場所「溜席の着物美人」とともに15日間皆勤の「ワンピース女性」 本人が明かす力士の浴衣地で洋服をつくる理由「同じものは一場所で二度着ることはない」
NEWSポストセブン