「セカンドオピニオン」が叫ばれて久しい。今ではすっかり常識となったが、発祥は1980年代のアメリカ。医師の治療方針に納得がいかなければ、別の医療機関で意見を聞くことができるこのシステムは、日本でも広がりを見せ1989年に、国立がん研究センターに主にセカンドオピニオンに関する相談を受け付ける「がん医療相談外来」が誕生した。
30年たった今、意見を聞くだけでなく、医師と患者が対話をしながら、検査や治療を選択する新しい動きが定着しつつある。
それは「セカンドオピニオン」と同じくアメリカで始まった、「チュージング・ワイズリー」と呼ばれるムーブメント。“ムダな医療、有害な医療をなくそう”という一大キャンペーンである。
『世界の医療標準からみた 受けてもムダな検査 してはいけない手術』(洋泉社)の著者で、チュージング・ワイズリーに詳しい医療経済ジャーナリストの室井一辰さんが解説する。
「腎臓内科や乳腺外科など、在米の各専門医らが所属する学会が7年前から始めた運動です。彼らの研究結果や実績をもとに、必要がない検査や治療を具体的にピックアップし、発表しています。アメリカは国民皆保険制度ではなく医療費が高いため、患者側に『ムダなものは受けない』という意識が高く、こうした動きが強いのです」
アメリカ人でなくとも、医療におけるムダを知って、省くにこしたことはない。
◆CT検査
日本では当たり前に実践されているが、世界基準に当てはめれば、ムダな医療が多く存在する。その1つが、CT検査だ。
頭をぶつけて病院に行くと、「念のためにCTを撮りましょう」と言われるのはよくある話。しかし室井さんは「ムダな検査」と指摘する。
「チュージング・ワイズリーにおいては、少し頭を打っただけで目立った外傷や症状がなければ、CT検査は行わなくていいとされています。何か病気があれば症状から判断できるし、CTには放射線の被ばくリスクもあります。
しかしCTを導入した病院は、維持費や検査技師の給料を稼がなければならない。そういった病院の“懐事情”も『とりあえず撮りましょう』と勧められやすい一因です。一方、MRI検査は被ばくの可能性はありませんが、子供が受ける場合、落ち着かせるために使う麻酔薬に呼吸停止のリスクがある。むやみに検査すべきではありません」(室井さん)
新潟大学名誉教授の岡田正彦医師も、CT検査に疑問を投げかける。
「最近はCTを使った内臓脂肪の検査が流行っていますが、1枚撮ると胸部X線の10~100倍の放射線被ばくがあり危険です。内臓脂肪を知りたければお腹まわりをメジャーで測ればいいだけ。お腹の中をみてもらうならエコー検査を推奨します」
※女性セブン2019年2月21日号