だが、「何だ、パジェロとは違うのか」とがっかりするには及ばない。ベースとなったL200は、トラックといえどもオフロードモデル。岩だらけの山岳を走っても車体がダメージを負いにくい強固なフレーム構造を持っている。その資質はパジェロスポーツに丸ごと受け継がれていることだろう。
悪路だけではない。三菱は昨年夏、イギリスにパジェロスポーツを「ショーグンスポーツ」という名で投入した。日本のカタログスペックには記載されないが、現地では渡渉性能、すなわち川を渡る能力も公表されており、その水深は何と70cmである。
パジェロスポーツが人気を博している国を見ると、ロシア、オーストラリア、ブラジルなど、おしなべて道路環境の厳しい国だ。
その厳しさは日本ではちょっと想像できないレベル。道路に設置された行き先案内板に「マガダン(カムチャツカ半島対岸の町)3000km」みたいな表示がさも当たり前のように立っていて、その過半が未舗装路だったりするのだ。遊びではなく、通行のために川を渡渉するような場所もある。パジェロスポーツはそういう道を走るためのクルマなのである。
ほとんどの道路が舗装され、クロスカントリー性能はほとんど要求されない日本でそんな本格4×4をなぜ売るのか。そこに年産120万台という小規模メーカーである三菱のブランド戦略が垣間見える。
フラッグシップであるパジェロが生産中止になるという報道がこれまで何度かメディアを賑わせたことがある。三菱マンのひとりは、「そのたびにお客様から多くのお叱りの言葉をいただいた」と振り返る。
三菱のブランドイメージはオフロードのパジェロと、ラリーカーのベースになる高性能セダンの「ランサーエボリューション」がけん引役であったのだが、すでにランサーエボリューションはモデル廃止となり、存在しない。もうひとつのモニュメントであったパジェロまでなくすとなれば、三菱ファンが心中穏やかでいられないのも無理はない。