今年のインフルエンザの流行は例年より激しい。2019年第3週(1月14~20日)時点でも増加傾向にあり、まだまだ警戒が必要だ。
うがい、手洗いの徹底や防寒、加湿、マスク着用などが重要なのは周知のことだが、注意が必要なのは高齢者と幼児。元気な子供や体力のある成人の対応とは、区別した方がよいという。地域の総合診療に取り組む東京・多摩市のあいクリニック中沢・院長の亀谷学さんに聞いた。
「インフルエンザは、感染者の咳や鼻水、唾液などにいるインフルエンザウイルスの“飛沫感染”や、物や手についたウイルスの“接触感染”でうつります。1~4日間の潜伏期の後に、悪寒・戦慄につづく高熱、頭痛、筋肉痛、関節痛、咳、鼻水、嘔吐、下痢などの症状が見られます。
症状が軽くすむこともありますが、熱は1~5日ほどで下がることから、通常の風邪が満3日で解熱するのに対して、インフルエンザは“5日で治る重い風邪”ともいわれています」と亀谷さん。
高齢者にとって怖いのは、健康な成人に比べて重症化しやすいことと合併症だ。
「肺炎や脳症などの合併症を起こすことがあります。特に高齢者は心臓や肺、腎臓などの働きが低下しており、糖尿病など感染に弱い病気を持っている人もいます。あえぐような呼吸や意識状態が悪い場合は、インフルエンザ感染だけでなく、肺炎に移行していることも疑います。場合によっては命にかかわることもあるからです」
日本人の死因でがん、心疾患に次いで多いのも肺炎だ。
「その多くは高齢者に見られる誤嚥性肺炎ですが、この季節は風邪やインフルエンザからの移行も注意すべきです。肺炎に至るリスクの高い風邪やインフルエンザは、高齢者にとって侮れないものと心得ておきましょう」
私たちが風邪やインフルエンザにかかれば、わかりやすい自覚症状や典型的な経過を察知して、たいてい自分で感染に気づける。しかし、この点も高齢者と健康な成人は違うという。
「高齢者は自分の不調に気づきにくく、ましてや認知症があると、不調を周囲に伝えることが難しいこともあります。身近にいる家族が注意して見ることが大切なのです。また高齢者は必ずしもわかりやすい症状や典型的な経過をたどるとは限りません。
たとえば38度以上の発熱があれば、常に肺炎が疑われます。場合によっては腎盂炎や急性胆のう炎などの感染症になっていることもあります。しかしこういった発熱や呼吸器症状が訴えられることなく、検査してみると肺炎にまで至っていたというケースもあるのです。つまり高齢者の場合は“何でもありうる”と考えるのが賢明で、症状だけを目安にしていると、重大な見落としをしかねません」