病気になったら医療費に関して漠然とした不安を抱くが、本当に怖いのは「お金がかかること」よりも「治療費の総額がいくらかかるかを知らないこと」だ。
たとえば、脳梗塞治療では、いかに早く治療を開始できるかで、その後の医療費総額が変わる。くどうちあき脳神経外科クリニック院長の工藤千秋医師が解説する。
「発症から4時間半以内に治療を開始できる場合は、脳の血管に詰まった血栓を点滴で溶かす『血栓溶解術(t-PA)』を行ないます。t-PA治療を受けた患者のうち、4割は日常生活に復帰できるとされます。後遺症が出ないくらいまで回復することも多く、退院後も再発予防の内服薬の費用程度で済みます」
この場合の治療費は、薬代と入院費(2週間)を合わせて約72万円(3割負担額)となり、患者の自己負担額に一定の上限を設ける高額療養費制度を適用すると、自己負担額は約10万円で済むことになる。
一方で、発症から4時間半のタイムリミットを過ぎると、治療法は大がかりになってしまう。
「太ももの付け根の動脈から直径2mmほどのカテーテルを入れ、血栓溶解剤(ウロキナーゼなど)を投与したり、カテーテルの先端に専用の装置をつけて血栓を絡めとる術式(血管内治療)をとることが多い」(前出・工藤氏)
この治療法では、入院が長期化し治療費がかさむ場合がある。医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が指摘する。