厚労省の統計データ不正操作による不都合な真実が明るみに出て、一部の大企業を除いて実質賃金はむしろ下がっていることが明らかになった。その実態を素直に映し出しているのが、消費の二極化がますます進んでいる状況だ。ジャーナリストの河野圭祐氏がレポートする。
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昨年の乗用車販売(軽自動車を含む)で、5ナンバーの小型乗用車の比率が29.9%と初めて3割を切った。かつては新車の65%を小型車が占めていたから隔世の感だ。
もちろん、衝突安全性能の向上や、日本よりも大きなクルマが主戦場となる海外市場をメーカーが重視していることから、クルマのサイズが年々大きくなり、小型車の枠を超えて3ナンバー車が多くなっている事情もある。かつては大衆車の代表車だったトヨタ自動車の「カローラ」も、いまや3ナンバーだ。
ただし、そうした点を除いても「業界に関わらず、高価格帯と低価格帯に販売が2極化し、中間価格帯が苦戦するという構図になっている」(ある自動車メーカー幹部)のは、日本でも格差社会が拡大している証左といえる。この幹部はこうも指摘する。
「直接的な価格帯とは少し違いますが、ミニバンも、たとえば『アルファード/ヴェルファイア』(トヨタ自動車)のような大型と、『フリード』(ホンダ)や『シエンタ』(トヨタ)のような小型に2極化し、『ウィッシュ』(トヨタ)や『プレマシー』(マツダ)のような中間層向けのミニバンマーケットがなくなってきている。
クルマに限らず、中途半端な位置づけの商品は消費者の厳しい目によって、淘汰されていくことがこれからますます加速していくのではないかと思っています。
もっとも、3ナンバーか5ナンバーかという議論は、その流れとは少し違うのかなと。ダウンサイジングターボによって、小排気量車でも、より出力が出せるようになったことや、安全性能の要求が高まったりデザイン要素が求められたりした結果、3ナンバー車が増えて5ナンバー車が減った要因もあると思います。なので、高価格帯のプレミアムカーすべてが3ナンバーという構図ではありません」
小型車の消失分は、輸入車を含めて3ナンバー車へ移行した人と、「クルマは下駄代わりで十分」と、軽自動車に移行した人に2分され、カーシェアやサブスクリプションなどを利用する人たちを除けば、この傾向はさらに強まりそうだ。