国内

刑事と公安 仲が悪い理由を公安経験元刑事が語る

刑事と公安は水と油?

 警察の内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た警官の日常や刑事の捜査活動などにおける驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、刑事と公安の確執について掘り下げる。

 * * *
 警察の隠語に“ハム”という言葉がある。ハムとは公安警察のことだ。公の字がカタカナのハとムから成るためそう呼ばれているのだが、その言葉にいいイメージはない。現役や元刑事に公安の話を聞こうとすると、皆「ハムね…」と表情を曇らせ、口を濁すからだ。刑事と公安は仲が悪いというのが通説だ。

「ハムは嫌いです」

 公安にいたという元刑事も露骨に嫌な顔をした。「ハムのことは語りたくない」という彼だったが、嫌いと言い切る理由について聞くと、公安での経験を話してくれた。

 それまで強行犯係の刑事だった彼は、「あんたみたいな人が必要なんだ」と請われ、嫌々ながら公安へ異動した。配属されたのは公安部外事課。折しも訪日外国人や不法入国する外国人が増加していた時期だった。

 だが行けと言われたのは、都内某所にある立派なビルだ。

「入り口がわかんないんだよね。何にも表示が出てないからさ。仕方ないからビルに入って、呼び鈴を鳴らしたよ」

 警視庁の警察官が全員、所轄の署や派出所、交番にいると思ったら大間違いだ。実は都内のあちこちに分室と呼ばれる場所がある。交通課などの分室は公になっているが、捜査拠点となっている分室は違う。ビル1棟やビルの数フロアを借り上げている。出入りしている警察官は私服のため、はた目にそれが警察の分室だとはわからない。筆者が知っている限りだが、ビルの案内板や郵便受けにそれらしき表示が出されていたことはない。

 異動翌日、元刑事は主任に「面取りに行くぞ」と呼ばれた。

「作業に入るから面取りに行くぞって。公安では捜査のことを作業って言うんだよ。で、面取りに行くっていうわけ。『面取り?』と聞くと、顔を取りに行くんだって。でも行ってみて茫然、ほんとに顔を見ただけなんだよ。やつらはそうやって見ているだけなんだ。だからハムは大嫌いです」

 そう言うと、苦々しそうに顔をゆがめ、元刑事は声のトーンを落とした。

「例えば火炎車だとか、ゴミ箱に時限装置をつけて爆発させるとかあるだろう。公安のやつらは対象者の近辺にカメラを全部つけて、すべて監視する。見ていて、時限装置をつける、火をつけるのを確認している。なのにそこですぐには押さえない。刑事だったらそこで押さえるが、やつらは見てて、そのままやらせる。やらせて追っかける。

 途中でまかれても、その場所を中心に探れば、何らかの痕跡が出てくる。わずかでも先に進めればいい。時間がかかるが、それを繰り返せばどこかの組織にたどり着く。事件が起きて、犯行声明が出れば組織が絞れる。そこで組織を一網打尽にできる」

 これが公安捜査のやり方だ。

「刑事ならそこで押さえるのが基本、現行犯逮捕だ。実行犯をとっ捕まえる。押さえて叩いて、次々と芋づる式に挙げて組織をあぶり出す。公安はなぜ、そこで犯罪をやらせるのか。未遂で終わらせればいいじゃないか。誰かが巻き込まれて死んだら、誰が責任を取るのか。やつらは組織を潰すためには多少の犠牲は云々と言う。ふざけるな!だ。嘘でも誇張でもない」

関連キーワード

関連記事

トピックス

不倫報道の渦中にいる永野芽郁
《私が撮られてしまい…》永野芽郁がドラマ『キャスター』打ち上げで“自虐スピーチ”、自ら会場を和ませる一幕も【田中圭との不倫報道】
NEWSポストセブン
(SNSより)
「誰かが私を殺そうとしているかも…」SNS配信中に女性インフルエンサー撃たれる、性別を理由に殺害する“フェミサイド事件”か【メキシコ・ライバー殺害事件】
NEWSポストセブン
電撃引退を発表した西内まりや(時事通信)
電撃引退の西内まりや、直前の「地上波復帰CMオファー」も断っていた…「身内のトラブル」で身を引いた「強烈な覚悟」
NEWSポストセブン
女性2人組によるYouTubeチャンネル「びっちちゃん。」
《2人組YouTuber「びっちちゃん。」インタビュー》経験人数800人超え&100人超えでも“病まない”ワケ「依存心がないのって、たぶん自分のことが好きだから」
NEWSポストセブン
悠仁さまの大学進学で複雑な心境の紀子さま(撮影/JMPA)
悠仁さま、大学進学で変化する“親子の距離” 秋篠宮ご夫妻は筑波大学入学式を欠席、「9月の成年式を節目に子離れしなくては…」紀子さまは複雑な心境か
女性セブン
品川区にある碑文谷一家本部。ドアの側に掲示スペースがある
有名ヤクザ組織が再び“義憤文”「ストーカーを撲滅する覚悟」張り出した理由を直撃すると… 半年前には「闇バイト強盗に断固たる処置」で話題に
NEWSポストセブン
現在は5人がそれぞれの道を歩んでいる(撮影/小澤正朗)
《再集結で再注目》CHA-CHAが男性アイドル史に残した“もうひとつの伝説”「お笑いができるアイドル」の先駆者だった
NEWSポストセブン
『THE SECOND』総合演出の日置祐貴氏(撮影/山口京和)
【漫才賞レースTHE SECOND】第3回大会はフジテレビ問題の逆境で「開催中止の可能性もゼロではないと思っていた」 番組の総合演出が語る苦悩と番組への思い
NEWSポストセブン
永野芽郁の不倫騒動の行方は…
《『キャスター』打ち上げ、永野芽郁が参加》写真と動画撮影NGの厳戒態勢 田中圭との不倫騒動のなかで“決め込んだ覚悟”見せる
NEWSポストセブン
電撃の芸能界引退を発表した西内まりや(時事通信)
《西内まりやが電撃引退》身内にトラブルが発覚…モデルを務める姉のSNSに“不穏な異変”「一緒に映っている写真が…」
NEWSポストセブン
入院された上皇さまの付き添いをする美智子さま(2024年3月、長野県軽井沢町。撮影/JMPA)
美智子さま、入院された上皇さまのために連日300分近い長時間の付き添い 並大抵ではない“支える”という一念、雅子さまへと受け継がれる“一途な愛”
女性セブン
交際が伝えられていた元乃木坂46・白石麻衣(32)とtimelesz・菊池風磨(30)
《“結婚は5年封印”受け入れる献身》白石麻衣、菊池風磨の自宅マンションに「黒ずくめ変装」の通い愛、「子供好き」な本人が胸に秘めた思い
NEWSポストセブン