泉佐野市では、返礼品をすべて地元の特産品でまかなうことが難しい実状もあったという。
「泉佐野市は泉州タオルの産地ですが、ふるさと納税で注文が殺到すると、製造が追いつかず、発送が滞ってしまう。返礼品を地場産品に限定するということは、供給力の差が自治体の格差につながるのではないかと危惧します」
しかしながら、法改正を見越した駆け込みキャンペーンが、総務省の心証を悪くしたことは否めない。
「100億円還元キャンペーンをやめるつもりはありません。泉佐野市では140社がふるさと納税に関わっていますが、法改正によって約7割の事業者との取引をやめなければならなくなる。結果、経営が危なくなったり、倒産する会社が出ることだけは避けなければならない。
ギフト券の送付を8月まで指定できるようになっているのは、8月まで事業者さんの仕事を確保したいという考えもある。地元の事業者と、面と向かって接しているのは地方自治体です。制度をコロコロ変える国の役人に地方自治体は常に翻弄されているんです」
総務省からの風当たりが強まる一方、全国の自治体からは「泉佐野が最後の砦だ。がんばってほしい」という激励の声が届いていると千代松市長は明かした。
●取材・文/柳川悠二(ノンフィクションライター)
※週刊ポスト2019年3月1日号