かつて「婚約指輪は給料3か月分」を謳うCMがあったが、額はさておき、婚約指輪は結婚相手に気持ちを伝える大事なもの。ところが、破談になった相手が高価な婚約指輪を売り払ってしまった場合、罪に問われるのか? 弁護士の竹下正己氏が回答する。
【相談】
息子のことで相談があります。息子は昨年末、取引先のOLと婚約。今春に結婚式を控えていたのですが、性格の不一致だとかで破談。問題は息子が贈った高価な婚約指輪を彼女が売り払ってしまったこと。大人しい息子は「仕方ない」と諦めていますが、婚約指輪を転売する行為は法律違反になりませんか。
【回答】
婚約指輪は結婚を約束したときに、その証として男性が女性に贈るものです。以前は婚約の際に、結納と称し、お金を渡すことが普通でしたが、結納について最高裁は「結納は、婚約の成立を確証し、あわせて、婚姻が成立した場合に当事者ないし当事者両家間の情誼を厚くする目的で授受される一種の贈与」と判断しました。
婚約指輪も同じ趣旨で贈与されるものです。贈与で女性が所有することになりますが、結婚しなかった場合には目的不達成となり、返還義務が生じます。したがって、息子さんの元婚約者は指輪を返さなくてはなりません。処分したり、失くしてしまえば、債務不履行を理由に損害賠償請求できます。